「経理ってどんな仕事をしているの?」——同じ会社の同僚にすら、意外と知られていないのが経理の仕事です。「数字を扱う」「お金の管理」くらいのイメージで止まっている人がほとんどではないでしょうか。
私は経理事務職を22年やってきました。この記事では、経理の仕事内容を日次・月次・年次の流れで具体的に書きます。1日のスケジュールや繁忙期、やりがいと大変さまで、現場のリアルをお伝えします。これから経理を目指す人にも、経理がどんな世界か伝わるはずです。1か月と1年の流れを知っていることは、副業で「次に何が来るか」を言える強みになります。最後にその話も書きました。
経理の仕事を一言でいうと
経理の仕事は、会社のお金の動きを記録し、正しい数字として残す仕事です。商品が売れた、仕入れをした、給料を払った——会社で起きる全てのお金の動きを、ルールに従って帳簿に記録していきます。
そして、その記録を集計して「会社が儲かっているか」「いくら現金があるか」を明らかにします。会社の数字の真実を握っているのが経理、と言ってもいいでしょう。
よく似た言葉に「会計」「財務」がありますが、ざっくり整理するとこうです。
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 経理 | 日々のお金の記録・集計(過去〜現在の数字) |
| 会計 | 記録をもとに決算書を作る(経理と一体のことも多い) |
| 財務 | 資金調達や資金繰りの計画(未来のお金) |
中小企業では、この3つを経理担当者が一人で兼ねていることも珍しくありません。
経理の仕事内容【日次の業務】
毎日コツコツ発生する業務です。経理の土台になる部分。
- 現金・預金の管理:小口現金(手元のお金)の出し入れ、銀行口座の残高確認
- 伝票・仕訳の入力:その日の取引を会計ソフトに記録
- 経費精算のチェック:従業員の立替経費を確認・処理
- 請求書・領収書の処理:受け取った請求書の整理、支払いの準備
地味に見えますが、ここを毎日きちんと積み上げることが、月末・年度末のラクさに直結します。日次を溜め込むと月次決算が地獄になる——これは経理あるあるです。
現場から経理歴22年の管理人
「日次はコツコツ」と書きましたが、ここが思っているより時間を食います。
私のいる会社はまだ紙とデータが混ざっていて、経費精算のこまごました処理に手間がかかります。そしていまでも現金でやりとりする取引先があります。本や記事では「経理はDXで効率化」と書かれますが、進んでいない会社のほうがまだ多いのが実際のところです。
これから経理に入る人は、「入力は一瞬、その前後が長い」と思っておくといいと思います。領収書を集める、内容を確かめる、足りないものを催促する。時間がかかるのはこの部分です。
経理の仕事内容【月次の業務】
毎月決まったタイミングで発生する、経理の山場の一つです。
- 月次決算:その月の売上・経費を締めて、試算表をまとめる
- 請求書の発行:取引先への請求(締め日に合わせて)
- 支払業務:仕入先・経費の支払い処理
- 給与計算:勤怠を締めて給与を計算・支給(給与計算業務とは)
- 社会保険・税金の納付:源泉所得税、住民税などの納付手続き
月次決算は「今月会社がどうだったか」を数字で示す作業で、経営者が経営判断に使う大事な資料になります。締め日のあたりが、経理の月内で一番忙しい時期です。
現場から経理歴22年の管理人
この一覧、会社によって担当がかなり変わります。私の場合はこうです。
- 給与計算・社会保険/私がやっています。ただし本来は「労務」の仕事です。中小企業では経理が兼ねることが多く、私も経理・総務・労務の3つを担当しています
- 請求書の発行/売掛の請求書は営業事務が担当しています。私が出すのは経費に関する請求書だけです。ここは営業事務が持っている会社がけっこう多いと思います
求人票に「経理」と書いてあっても、中身は会社ごとに別ものです。面接では「どこからどこまでを担当しますか」と聞いておくと、入ってからのズレが減ります。
経理の仕事内容【年次の業務】
1年に1回、しかし最重要級の大イベントが集まります。
- 年次決算(本決算):1年間の総まとめ。決算書を作成する経理の最大の山場
- 年末調整:従業員の所得税の精算(11〜12月)
- 法定調書・償却資産申告など:税務署・自治体への各種提出(1月)
- 税理士との連携:決算・申告書作成のやり取り
決算期は経理の大きな山場です。会社の数字を確定させ、税金を計算する根拠になるため、ミスが許されません。ここを乗り切ったときの達成感は、経理ならではのものです。
現場から経理歴22年の管理人
よく「決算期がいちばん忙しい」と書かれます。でも私の実感は少し違います。いちばん忙しいのは12月です。
理由は、年末調整と冬の賞与が重なるからです。どちらも期限があって、どちらも人のお金に関わるので後回しにできません。この時期はどうしても残業が続きます。
逆に決算は、毎月きちんと締めていれば、それほど残業になりません。1年ぶんの数字を最後にまとめて作るのではなく、月次で積み上げたものを確定させる作業だからです。決算がしんどい会社は、たいてい月次がたまっています。
あともうひとつ、意外な忙しさの原因があります。曜日の並びです。給与と月末の支払いが重なる月で、休日の関係で作業できる日が少ないと、その週はどうしても残業になります。仕事の量ではなく、締め切りまでの日数で忙しさが決まる月があるのです。
経理の1日のスケジュール例
通常期(繁忙期以外)の、ある1日のイメージです。会社によって差はありますが、雰囲気はこんな感じです。
| 時間 | 業務 |
|---|---|
| 9:00 | メール確認、前日の入出金・残高チェック、当日の引き落としなどの確認 |
| 10:00 | 伝票入力・仕訳、経費精算の処理 |
| 12:00 | 昼休み |
| 13:00 | 請求書の処理、支払いデータの準備 |
| 15:00 | 取引先や社内からの問い合わせ対応 |
| 16:00 | 月次資料の作成、書類整理 |
| 17:30 | 翌日の段取り確認、退勤 |
通常期は比較的落ち着いていて、残業も少なめ・予定が立てやすいのが経理の働きやすさです。一方、月末・決算期はぐっと忙しくなる——このメリハリが経理の特徴です。
経理の1か月のスケジュール例
1日の流れよりも、経理の忙しさを決めているのは1か月の流れです。支払日や締め日が決まっているので、毎月おなじ形で波がやってきます。実際の中小企業の例で見てみます。
上旬(1日〜10日)
- 銀行の入出金データの保存、通帳記帳
- 手形の取立、受取手形の仕訳・起票
- 各拠点の月末残高照会、預り金元帳
- 現預金と借入金の照合
- 売掛金の照合(10日まで)、終わったら印紙税の申告と納付
- 請求書の発行、前月の現金仕入れリスト
- 6日ごろ/資金移動、10日支払の振込、でんさい、所得税・住民税の納付
- 7日ごろ/借入金の返済残高の確認、前月分の売上仕訳、前月分の減価償却の仕訳
- 10日/支払日
中旬(17日〜20日ごろ)
- 18日ごろ/資金移動、20日支払の振込、でんさい、小切手、借入返済と各銀行の残高確認、web請求の出力
- 20日/支払日、印紙税の申告、借入金の返済
- 出勤簿のチェック、有給の管理
- 賃料・手数料の仕訳入力、手形の決済処理
- 前々月分の処理(ここが月次決算の本体)/棚卸の仕訳、仮払いや消費税の仕訳チェック、得意先の登録、仕入の仕訳入力と買掛リストの出力、仕入から経費への振替、単価10万円以上のものは資産か費用かの判断
- 全部そろったら前々月の月次を確定 → 仮の試算表 → 税理士へ連絡
下旬〜月末
- 26日ごろ/給与、翌月10日に払う所得税・住民税の準備
- 27日ごろ/資金移動、末日支払の振込、月末の手形決済処理、でんさい通知の確認、明細の発送・配信の準備、通帳記帳
- 月末/社会保険の引落、月末の手形決済、電子申告、手形の取立と受取手形の入金処理
現場から経理歴22年の管理人
1か月でいちばんバタバタするのは、21日から末日の前日までです。
理由は単純で、支払日が10日・20日・末日の3回あるから。21日以降は、20日の処理の後片づけ、給与のデータ作り、月末支払いの準備、資金移動が全部かさなります。
さらに、給与が月末締めの当月末払いです。締める前に払うので、21日から末日ぶんは「見込み」で計算して払うことになります。予定外の休みがあって、有給が残っていない人がいれば、翌月に減額して調整します。これがなかなか手間です。
締め日と支払日がどうなっているかで、経理の忙しさはまったく変わります。求人を見るときは、ここも聞いてみるといいと思います。
経理に向いている人
22年やってきて、経理に向いていると感じるのはこういう人です。
- コツコツ・正確な作業が苦にならない人:派手さより継続的な正確さが価値になる
- 数字を見るのが嫌いではない人:数学が得意である必要はない(計算はソフトがやる)
- 地道さを楽しめる人:毎月同じリズムを安定してこなせる
- ルールを守れる・確認できる人:自己流より「決まり通り」が大事
逆に「毎日変化がほしい」「同じ作業のくり返しが苦痛」という人にはやや退屈に感じるかもしれません。ただ、その安定性こそが経理の魅力でもあります。「経理副業に必要な知識は?」——そう思ったら経理副業で必要な知識まとめへ。5分野と、勉強する順番が分かります。
経理のやりがいと大変なところ
やりがい
- 会社の数字の全体像が見える:会社がどう回っているかを数字で理解できる
- スキルが景気や年齢に左右されにくい:どんな会社にも経理は必要。長く働ける
- 正確に締めきったときの達成感:決算を乗り切ったときの充実感は格別
大変なところ
- ミスが許されないプレッシャー:1円のズレも放置できない
- 繁忙期の忙しさ:決算期・月末は集中力が要る
- 地味で評価されにくい:「できて当たり前」と思われがち
大変さはありますが、「手に職がついて、長く安定して働ける」のは経理の大きな強みです。私が22年続けてこられたのも、この安定感があったからです。
この経験は、副業でこう活きます
1か月の流れと1年の流れを体で知っていることは、副業でそのまま価値になります。
「次に何が来るか」が分かる人は少ない
仕訳を入力できる人はたくさんいます。でも「来月は年末調整があるから、今のうちにここを片づけておきましょう」と言える人は、ぐっと減ります。
副業で関わる会社の経理担当は、他の仕事と兼任していることが多いです。だから先の見通しを出せる人は、頼りにされます。
「締め日が1つではない」を知っていることも強み
外から入ると、資料がいつ揃うのかが分かりません。ここを最初に聞けるかどうかで、あとの進み方が変わります。
「通帳や請求書は、毎月だいたい何日ごろに揃いますか。揃わないときは誰に確認すればいいですか」
この質問を最初にできる人は、実務を回したことがある人だけです。
忙しい時期を知っていると、無理な約束をしない
この記事に書いたとおり、経理がいちばん忙しいのは12月です。副業でも同じ時期が重なります。受けられる量を、自分の本業の山場と重ねて考える。ここを最初に決めておかないと、あとで苦しくなります。
現場から経理歴22年の管理人
私がいてきたのはどこも中小企業で、経理は少人数です。入金のチェック・勤怠のチェック・備品管理などを分担して、それ以外は基本的に自分が見る、という形が多いです。
この規模だと「経理だけやっていればいい」ということはまずありません。給与計算も、社会保険の手続きも、年末調整も、経理の仕事として回ってきます。
まとめ
- 経理は「会社のお金の動きを記録し、正しい数字として残す」仕事
- 業務は日次(記録)→月次(締め・給与)→年次(決算)のリズムで動く
- 通常期は落ち着き、月末・決算期に忙しくなるメリハリ型
- 向いているのは「コツコツ・正確・地道さを楽しめる」人
- ミスのプレッシャーはあるが、長く安定して働ける手に職
経理は派手さこそありませんが、どんな会社にも必要とされ、スキルが一生ものになる仕事です。経理という仕事の全体像が、少しでも具体的に伝わっていれば嬉しいです。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な解説であり、業務内容・スケジュールは企業の規模や業種により異なります。2026年6月時点の情報に基づきます。
