「副業を始めたいけど、何から手をつければいいか分からない」「会社にバレたら困る」——そんな不安で一歩を踏み出せない会社員の方は多いはずです。
この記事では、数字とお金の管理が本業である経理の視点から、会社員が副業を始めるための5つのステップを順番に解説します。この順番どおりに進めれば、後から「しまった」となるポイントをほぼ潰せます。
始める前に知っておきたい現実
手順の前に、ひとつだけ書いておきます。副業は「始めればすぐ収入になる」ものではありません。
このブログも始めたばかりで、最初からアクセスが集まったわけではありません。書いて、直して、また書いてをくり返している最中です。記帳代行のような仕事でも、最初の案件を取るまでには準備と時間がかかります。
だから最初の数か月は「経験を積む期間」と考えるほうが続きます。すぐに結果が出ないと分かっていれば、思ったより稼げないときにやめずにすみます。逆に「すぐ稼げる」と思って始めると、たいてい3か月ももちません。
経理として会社のお金を見てきて思うのは、お金は「動いた分だけ」しか増えないということです。売上が立つには、その前に必ず何かをしています。準備・実績づくり・信用。副業で最初にやることは、稼ぐことではなくこの3つを積むことです。
ステップ1:就業規則を確認する
最初にやるべきは副業選びではなく、自分の会社の就業規則の確認です。確認するポイントは次の3つです。
- 副業が「禁止」「許可制」「届出制」「自由」のどれか
- 禁止・制限される副業の種類(同業他社での労働、会社の信用を損なう行為など)
- 違反した場合の処分規定
2018年に厚生労働省のモデル就業規則が「原則副業容認」に変わって以降、副業を認める会社は増えていますが、会社ごとのルールが最優先です。許可制なら、面倒でも先に申請しておくのが結局一番安全です。
「就業規則なんて見たことがない」という人も多いと思います。会社には就業規則を社員が見られるようにしておく義務があります(労働基準法106条)。総務や人事に「就業規則を見たいです」と言えば大丈夫です。人事も担当していた立場から言うと、そう言われても何とも思いません。見られるためにあるものだからです。
許可制の場合、申請で会社が見るのはだいたいこの3つです。
- 同業他社の仕事ではないか
- 就業時間や休日の取り方とぶつからないか
- 会社の信用を落とす内容ではないか
人事の目線で言うと、これは一発でアウトです。会社のパソコン・備品・情報を副業に使う。就業時間中に副業をする。同業他社の仕事を受ける。この3つは、副業が認められている会社でも問題になります。使う道具と時間は、きっちり分けてください。
ステップ2:住民税の仕組みを知っておく
副業が会社に知られるきっかけとして、よく挙げられるのが住民税です。ただし「必ずこうなる」という話ではありません。仕組みを順番に見ていきます。
- 副業で所得が増えると、翌年の住民税が増える
- 会社員の住民税は、原則として本業の給与から天引きされる(特別徴収)
- 会社には社員ごとの住民税額が通知されるので、給与の額に対して住民税が高いと、担当者が気づくことがある
対策としてよく知られているのが、確定申告のときに住民税を「自分で納付(普通徴収)」にする方法です。ここで大事なのは、この選択ができるのは、原則として給与所得・公的年金等以外の所得の部分だという点です。
- 原稿料・記帳代行・ネット販売など(給与ではない収入):自分で納付を選べる可能性がある
- アルバイトなど給与でもらう副業:本業の給与と合わせて特別徴収されるのが原則。自分で納付にできないことが多い
つまり「給与でもらう副業は住民税の扱いを分けにくい」ということです。会社に知られたくない事情があるなら、この違いを知ったうえで副業の形を選ぶと、後から慌てずにすみます。
住民税の取り扱いは市区町村によって運用が違います。「自分で納付」にチェックを入れても、そのとおりにならないことがあります。気になる場合は、お住まいの市区町村の課税課(住民税の担当)に、先に電話で確認するのが確実です。制度は年度によっても変わります。
また、住民税以外にも会社に分かる道はあります。副業先で働く時間や条件が一定以上になると、社会保険に二重で加入する手続きが必要になり、そこから分かることがあります。会社に知られたくない場合は、住民税だけでなくこちらも確認しておいてください。「住民税から会社に分かるの?」——そう思ったら住民税を普通徴収にする方法へ。普通徴収の手順と、その限界が分かります。
会社の経理には、何が見えているのか
ここは私が会社で実際にやっている仕事なので、中から見えるとおりに書きます。
毎年5月から6月ごろ、市区町村から社員全員ぶんの住民税の通知が会社に届きます。経理や総務の担当者は、それを1人ずつ給与ソフトに入力します。つまり特別徴収をしている会社では、社員の住民税の金額は担当者の目を通ります。
そのときに分かるのは「この人は住民税が高い」ということまでです。何の副業をしているかまでは分かりません。ただ、給与の額に対して住民税が飛び抜けていれば、気づく人は気づきます。
もう1つ、知っておいてほしいことがあります。確定申告で「自分で納付(普通徴収)」を選んでも、自治体の処理で会社ぶんに含まれてしまうことがあります。通知の書式は市区町村によって違い、こちらの選択がそのまま通るとも限りません。6月の給与明細で、住民税の金額を自分で確かめるのがいちばん確実です。前の年と比べて急に増えていたら、市区町村の課税課に問い合わせてください。
ステップ3:副業の種類を決める
副業は大きく分けると次の3タイプです。
| タイプ | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 時間切り売り型 | アルバイト、フードデリバリー | すぐお金になるが、時給に上限がある。給与でもらう形は住民税の扱いを分けにくい |
| スキル販売型 | ライティング、デザイン、記帳代行 | 本業スキルを活かせる。単価が育つ |
| ストック型 | ブログ、動画、デジタルコンテンツ販売 | 軌道に乗るまで時間がかかるが、資産になる |
経理目線でおすすめなのはスキル販売型とストック型の組み合わせです。本業の知識がそのまま商品になり、確定申告で経費計上できる余地も広がります。経理スキルを活かした副業は職種別・副業の選び方カテゴリーで詳しく扱っています。
現場から経理歴22年・ゆるゴースト
経理の仕事を長くしてきて感じるのは、経理の知識は「資格を取っただけ」では副業になりにくいということです。実際の会社では、仕訳だけをしているわけではありません。請求、入金の確認、支払い、給与、経費精算——会社のお金がどう動いているかが分かって、はじめて任せてもらえます。
だから簿記を取ったばかりの人は、まず勤め先で「お金の流れ全体」を見られる場所に立つのが近道です。仕訳だけを覚えるより、そのほうが副業の値段が上がります。
ステップ4:お金の記録を初日からつける
ここが経理が一番強調したいポイントです。売上と経費の記録は「稼げるようになってから」ではなく初日からつけてください。理由は2つあります。
- 副業所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になり、そのとき記録がないと地獄を見る
- 開業届を出して青色申告にする場合、帳簿づけが要件になる
最初は無料の家計簿アプリやスプレッドシートで「日付・内容・金額・売上か経費か」を記録するだけで十分です。副業の確定申告「20万円ルール」では20万円ルールの正確な中身をまとめています。「確定申告はいくらから必要?」と迷ったときに読んでみてください。
記録する項目は、この6つで足ります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日付 | お金が動いた日(入金日・支払日) |
| 内容 | 誰から・何のお金か(「◯◯社 記事作成料」など) |
| 金額 | 実際の金額。引かれた分があれば、それも書く |
| 売上か経費か | 入ってきたお金か、出ていったお金か |
| 支払い方法 | 銀行振込・クレジットカード・現金 |
| 証拠 | 領収書・請求書・画面のスクリーンショット |
経費になりやすいのは、通信費、文房具などの消耗品、本、ソフトの利用料、仕事に使う道具です。家でやるなら、家賃や電気代のうち仕事に使っている割合ぶんを経費にできます(家事按分)。次に「これは経費にできる?」が気になったら、副業で経費にできるものへ。経費にできるものの一覧と家事按分まで書いています。
領収書の保存で、いま一番間違えやすいところです。メールやサイトからデータで受け取った領収書は、データのまま保存します。紙に印刷して、元のデータを消してはいけません(電子帳簿保存法)。「副業」という名前のフォルダを1つ作って、そこに入れていくだけで大丈夫です。
副業を続ける見込みが出てきたら、開業届を出して青色申告にすると、控除を受けられます。ただし青色申告は帳簿づけが条件です。だからこそ、記録は初日からなのです。
20万円以下でも、住民税の申告はいる
ここは見落としが多いところです。よく言われる「副業が年20万円以下なら申告不要」は所得税の話です。住民税には、この20万円の決まりがありません。
- 副業の所得が20万円以下 → 所得税の確定申告は不要(他の条件による)
- でも住民税の申告は必要。お住まいの市区町村に申告します
- 確定申告をした場合は、その情報が市区町村に回るので、住民税の申告は別にしなくてよい
「20万円以下だから何もしなくていい」と思っていると、ここが抜けます。金額が小さくても、記録さえ残っていれば申告の手間は10分ほどです。くわしくは副業の確定申告「20万円ルール」と住民税を普通徴収にする方法を読んでみてください。
ステップ5:小さく始めて、数字で判断する
最初から大きな初期投資(高額な講座、機材一式など)をするのは危険です。初期費用1万円以内・月10時間以内くらいの規模で始めて、3か月続けてみてください。
3か月後に見るべき数字はシンプルです。
- 時給換算:稼いだ金額 ÷ かけた時間。最低賃金を下回っていても、伸び率が右肩上がりなら継続の価値あり
- 利益率:売上に対して経費がかかりすぎていないか
感覚ではなく数字で「続ける・やめる・方向転換」を判断する——これが経理流の副業術です。
請求と入金でつまずくところ
会社員をしていると、請求書を出す側になった経験はほとんどないと思います。ここでつまずく人が多いので、先に押さえておきます。
請求書に入れるもの
- 相手の会社名(宛先)
- 発行した日付
- 仕事の内容と金額
- 振込先の口座
- 自分の名前・住所・連絡先
形式は自由です。相手から指定の様式をもらえることもあります。
報酬が減って振り込まれることがある
原稿料やデザイン料などは、支払う側が税金を先に引いてから振り込む決まりになっています(源泉徴収)。1万円の報酬なら、手取りは約8,980円になります(原稿料などは10.21%が差し引かれます。ただし報酬の種類や金額によって割合が変わることがあります)。これは取られっぱなしではなく、確定申告で精算されて、戻ってくることもあります。だから「引かれた金額」も必ず記録してください。ここを書いていないと、確定申告のときに損をします。
インボイスの登録は必要?
副業を始めた時点では、登録しなくても大丈夫です。相手が会社の場合、登録番号を求められることがあります。求められてから考えても遅くありません(副業とインボイス)。
お金はすぐには入らない
会社の支払いは「月末締め・翌月末払い」のような形が多く、仕事をしてから入金まで1〜2か月かかるのがふつうです。経理として支払う側をやっているので断言できます。「今月やった仕事のお金は、来月や再来月に入る」——これを分かっていないと、生活の計画がくるいます。
経理の副業を始めるまでの道すじ(全5ステップ)
- 副業を始める準備をする(いま読んでいる記事)
- 経理で何ができるかを知る
- 必要な知識をそろえる
- 案件をさがす
- 会計ソフトを決める
次に読む → 経理スキルで稼ぐ副業5選
まとめ
- 就業規則を確認する(許可制なら申請する)
- 住民税の仕組みを知る(給与でもらう副業は住民税の扱いを分けにくい)
- スキル販売型×ストック型を軸に副業を選ぶ
- 売上と経費の記録を初日からつける(データの領収書はデータのまま保存)
- 20万円以下でも住民税の申告はいる
- 請求書・源泉徴収・入金の遅れも先に知っておく
- 小さく始めて3か月後に数字で判断する
税金まわりの不安は、仕組みさえ分かれば怖くありません。次は「20万円ルール」の記事で、確定申告が必要になるラインを正確に押さえておきましょう。
参考・出典(公的機関のサイト)
※税制は改正されます。また同じ内容でも、所得の金額・勤務先の状況・お住まいの自治体によって扱いが変わることがあります。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。具体的な税務判断は税務署または税理士にご確認ください。制度は2026年6月時点の情報に基づきます。
