「事務職に就きたいけど、経理事務と一般事務って何が違うの?」——求人を見ていると両方が出てきて、どちらを選べばいいか迷う人は多いです。
同じ「事務」でも、この2つは仕事の中身も求められるスキルも、将来性もかなり違います。経理歴22年の視点で、両者の違いをはっきり比較して書いていきます。あわせて、私が実際に担当していた「営業事務」との違いも紹介します。事務職を目指す人、転職を考えている人の参考になればと思います。そして3つの事務は、どれも副業につながります。ただしつながり方が違います。最後にその整理も書きました。
まずは結論:一番の違い
ざっくり言うと、こうです。
- 経理事務:会社のお金の流れを記録・管理する「専門性のある事務」
- 一般事務:書類作成・電話対応・データ入力など「会社全体を支える幅広い事務」
つまり経理事務は「お金」に特化した専門職寄りの事務、一般事務は「何でも屋」的な幅広いサポート事務。この方向性の違いが、スキルや将来性の差につながります。
現場から経理歴22年の管理人
私は一般事務も経理事務も、どちらも経験しました。両方やってみて、いちばん違うと感じたのは「仕事の終わり方」です。
- 一般事務/頼まれた仕事を、正確に、期日までに仕上げる。出したら、そこで一区切り
- 経理事務/数字を出したあとに、「なぜこの数字になったのか」を考える場面が増える
たとえば、ある月の経費が前の月より増えていたとします。一般事務なら、入力が合っていれば仕事は終わりです。経理だと、そこから「なぜ増えたのか」を見にいきます。何を買ったのか、いつもと違うことがあったのか。聞きに行くこともあります。
合っているかどうかだけでなく、その数字が何を意味しているのかまで見る。ここが、慣れるまでいちばんとまどったところでした。逆に言えば、「なんでだろう」と考えるのが苦にならない人は、経理に向いていると思います。
もうひとつ。一般事務は相手が社内の人ですが、経理は相手が数字です。数字は言い訳をしませんし、あいまいなまま受け取ってもくれません。そこを窮屈と感じるか、はっきりしていて気楽と感じるかで、向き不向きが分かれる気がします。
仕事内容の違い
| 経理事務 | 一般事務 | |
|---|---|---|
| 主な仕事 | 記帳・伝票処理・請求・支払・経費精算・月次決算の補助など | 書類作成・データ入力・電話/来客対応・備品管理・こまごました雑用など |
| 扱うもの | お金・数字・会計データ | 幅広い書類・スケジュール・社内サポート全般 |
| 専門性 | 高い(簿記・会計の知識が必要) | 広く浅い(特定の専門資格は不要なことが多い) |
| 仕事のリズム | 月次・年次の締めで忙しい時期とゆるい時期がある | 日々のサポート業務が中心 |
「経理は毎日どんな仕事をしているの?」——そう思ったら経理の仕事内容とはへ。1日の流れと1年の流れが分かります。一般事務が「会社の潤滑油」だとすれば、経理事務は「会社のお金の番人」というイメージです。
必要なスキルの違い
経理事務に必要なスキル
- 簿記の知識:3級〜2級レベル(簿記3級が入口)
- 会計ソフトの操作:freee・マネーフォワード・弥生など
- Excelは基本操作で十分:合計・並べかえ・コピーができれば足ります(経理で使うExcel)
- 正確性・几帳面さ:1円のズレも見逃さない
一般事務に必要なスキル
- 基本的なPCスキル:Word・Excel・メール
- コミュニケーション力:電話・来客・社内調整
- 段取り力・臨機応変さ:幅広い依頼をさばく
「経理はExcelが得意でないと無理」と思われがちですが、そんなことはありません。私の場合、Excelをいちばん多く使ったのは営業事務のころで、経理になってからはむしろ減りました。経理で使うのは、毎月おなじ形の表に数字を入れていく作業がほとんどです。難しい関数を覚える必要はありません。分からないことは、いまはAIや検索ですぐ調べられます。大事なのは関数を覚えていることではなく、「何をしたいか」を言葉にできることです。
大きな違いは、経理事務は「専門知識(簿記)」が武器になること。一般事務は特別な資格がなくても始めやすい反面、専門性でほかの人と差をつけにくい面があります。
営業事務との違い(私が実際にやっていた仕事)
事務の求人には、経理事務・一般事務のほかに「営業事務」もよく出てきます。私は営業事務も担当していました。実際にやっていたのは、次のような仕事です。
- 仕入:仕入先に発注して、値段と納期を確認する
- 在庫管理:今どれだけ在庫があるかを把握し、足りないものを早めに手配する
- 商品手配:注文どおりの商品を、必要な数だけ期日までに用意する
- 日程調整:納品日や打ち合わせの日を、営業担当・取引先・社内で合わせる
- 電話対応:お客様と営業担当をつなぐ。営業担当が外に出ている間の窓口になる
- クレーム対応:納品の遅れや品違いなど、まず事務が受けて、営業担当や社内につなぐ
やってみて分かったのは、営業事務は「売る人(営業担当)を後ろから支える事務」だということです。一般事務が会社全体を広く支えるのに対して、営業事務は営業部門と取引先にくっついて動きます。
| 経理事務 | 営業事務 | |
|---|---|---|
| 主な相手 | 社内のお金の流れ・会計事務所・銀行 | 営業担当・取引先・仕入先 |
| 主な仕事 | 記帳・請求・支払・経費精算 | 受注対応・仕入・在庫管理・商品手配・日程調整・電話やクレームの一次対応 |
| 一番大事なこと | 数字が合っていること | 営業担当とのコミュニケーション |
| 忙しくなる時期 | 月末・月初、決算の時期 | 納期の前、受注が増える時期 |
営業事務で一番大事なのはコミュニケーション力
仕事の中身だけ見ると「手配と調整の事務」ですが、実際にやってみて分かったのは、一番大事なのは営業担当とのコミュニケーション力だということです。
営業担当はお客様が相手で、契約を取ることが一番の仕事です。そのため事務には、けっこうな無理難題が来ます。「明日までに用意して」「今から数を増やして」といった依頼です。ここで営業担当と話ができないと、仕事が回りません。
相手は社内だけではありません。お客様からの電話やクレームを、最初に受けるのも事務です。「商品が届かない」「頼んだものと違う」という連絡は、営業担当が外に出ていれば事務にかかってきます。その場で分かることは答えて、分からないことは調べて折り返す。ここでの受け答えが、会社の印象そのものになります。
そして働きやすさは、組む営業担当によって大きく変わります。営業部門の力が強い会社だと「事務は営業担当が食わせてやっている」という空気になり、働きにくくなります。反対に「こまごました手配を事務がやってくれるから、自分は営業に専念できる」と考える人の下では、やりがいが出ます。同じ仕事内容でも、ここで居心地がまったく変わります。
お給料は、他の事務より高めのことが多いです。ただしその分、忙しさや営業担当との相性で当たり外れがあります。求人を見るときは、金額だけでなく「営業担当と事務の役割分担」を面接で聞いてみると、会社の雰囲気が分かります。
営業事務の経験は、経理でもむだになりません。仕入や在庫の流れが体で分かっていると、請求書や在庫の金額を見たときに「この数字はおかしい」と気づけます。取引先とのやり取りに慣れていることも、支払いや入金の確認で役に立ちます。
ただし営業事務も一般事務と同じで、資格で示せる専門性は身につきにくい面があります。ただ、同じ業種や似た業種の知識があるなら話は別です。その業界の商品と、仕事の進み方を知っている営業事務は、すぐに動けます。だから即戦力として欲しがられます。長く働けるスキルにしたいなら、その業種の知識に、簿記のようにどこでも通じる知識を足していくのが近道です。
向いている人の違い
| 経理事務に向いている人 | 一般事務に向いている人 |
|---|---|
| 数字やお金を扱うのが苦でない | 人と関わるサポート業務が好き |
| コツコツ正確に進めるのが得意 | 幅広い仕事を臨機応変にこなせる |
| 専門性を身につけて長く働きたい | 特定分野より広く会社を支えたい |
経理に向いている人・向いていない人では向いている人・向いていない人の特徴をまとめています。「自分は経理に向いている?」と迷ったときに読んでみてください。「数字が苦手」でも経理はできますが、数字への抵抗が強すぎる人は一般事務のほうが快適かもしれません。
給与・将来性の違い
キャリアの観点では、ここが最も大きな差になります。
- 経理事務:専門スキルが評価され、経験を積むほど働き手としての価値が上がる。転職・年収アップ・在宅・副業など選択肢が広い(経理の年収とキャリアパス)
- 一般事務:始めやすく働きやすいが、専門性で差をつけにくく、代わりがききやすい面がある
身もふたもない言い方をすると、「手に職をつけて長く稼ぎたいなら経理事務」です。簿記という積み上がるスキルがあるぶん、経理事務はキャリアの伸びしろが大きいのが強みです。
これは私が働いてきて感じたことです。頑張りを給料に反映しない会社では、どれだけ努力しても状況は変わりません。仕事を覚えても、量をこなしても、評価も給料もそのまま。変わらないまま時間だけが過ぎていきます。報われない場所で努力を続けるのは、時間がもったいないです。
だからこそ大事なのは、会社の外でも通じるスキルを持つことです。簿記・会計ソフト・Excelは、どの会社でも同じように使えます。今の会社で評価されなくても、転職先や副業にそのまま持っていけます。経理事務は、その「持ち運べるスキル」が身につく仕事です。
一般事務から経理事務を目指すには
「今は一般事務だけど、経理へ仕事を変えたい」という人も多いです。実はこのルートは定番で、十分に可能です。
- 簿記3級を取る:意欲と基礎力の証明になる
- 社内の経理業務に手を挙げる:経費精算の手伝いなどから経験を作る
- 会計ソフトに触れておく:実務イメージをつかむ
- 経理(補助)の求人に応募:未経験歓迎から実務経験を積む
次に「未経験からどうやって入る?」が気になったら、未経験から経理になるにはへ。簿記・求人の探し方・志望動機の書き方まで書いています。一般事務での「正確さ」「段取り力」は経理でもそのまま活きるので、決して遠回りではありません。
この経験は、副業でこう活きます
この記事では3つの事務を比べました。どれも副業につながりますが、つながり方が違います。
経理事務:そのまま仕事になる
仕訳・請求・支払は、記帳代行としてそのまま外に出せます。「経験がある」と言える範囲がはっきりしているので、応募もしやすいです。
営業事務:手配と調整の力が効く
在庫の管理、商品の手配、納期の調整、電話の一次対応。これはオンラインで事務を代行する仕事と重なります。
とくに「急な依頼をさばいた経験」は、そのまま強みです。営業担当から無理を言われて回してきた人は、外の仕事でも慌てません。
一般事務:見せ方を工夫する
幅広くやってきたぶん、何ができるのかが伝わりにくいのが難しいところです。「一般事務をしていました」では伝わりません。
やってきた作業を1つずつ書き出してみてください。書類の作成、データの入力、備品の発注、来客と電話の対応。並べると、受けられる仕事が見えてきます。
兼任してきた人がいちばん強い
3つのうち2つ以上をやってきたなら、それは珍しい経歴です。中小企業の案件は「経理も事務もまとめてお願いしたい」という形で来ることがあるからです(経理と総務・労務を兼任して大変だったこと)。
まとめ
- 経理事務は「お金に特化した専門事務」、一般事務は「幅広いサポート事務」
- 経理事務は簿記と会計ソフトが武器になる。Excelは基本操作で足りる
- 一般事務は始めやすいが、専門性で差をつけにくい
- 営業事務は営業担当を支える事務で、一番大事なのはコミュニケーション力
- 長く使える手に職を求めるなら経理事務が有利
- 一般事務から経理事務への仕事を変えるのも十分できる
どちらが良い・悪いではなく、「自分が何を大事にして働きたいか」で選ぶのが正解です。専門性とキャリアの伸びを重視するなら、経理事務は有力な選択肢になります。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な比較であり、職務内容・待遇は企業により異なります。2026年6月時点の情報に基づきます。
