経理は「手に職」がつく職種なので、転職でキャリアアップ・年収アップを狙いやすい仕事です。一方で、会社選びを間違えると「前より忙しくなった」「思っていた業務と違う」という食い違いも起きやすい。
この記事では、経理歴22年の視点で、経理の転職を成功させるコツを、タイミング・求人の見方・面接・会社選びの4つの角度から書いていきます。
私は経理だけでなく人事も担当してきました。面接には同席するだけでなく、面接官として会社の説明や仕事内容の説明をして、私が面接をしたこともあります。そのうえで、自分自身も何度か転職しています。採る側と受ける側の両方を見てきた立場から書きます。転職と副業は、準備することがほとんど同じです。最後に、辞める前に副業で試すという順番の話も書きました。
経理が転職しやすい理由
まず前提として、経理は転職のときに動きやすい職種だと思っています。理由はシンプルで、どの会社にも経理の仕事があるからです。「常に需要がある」と言い切れる統計は持っていませんが、経験者を探している募集は、私が見ている範囲では続けて出ています。
- 業種が変わっても、簿記・会計の基本は共通して使える
- 実務経験がそのまま評価される(資格+経験のかけ算が効く)
- 景気に左右されにくく、年齢を重ねても経験が武器になる
つまり、経理経験者は「持ち運べるスキル」を持っているということ。これは転職において大きな強みです。
転職するベストなタイミング
経理の転職は、時期によって有利・不利があります。経験から言えるタイミングのポイントです。
- 決算が落ち着いた後:繁忙期(決算期)を避けると、引き継ぎもスムーズで動きやすい
- 1つの決算を最後までやり切った後:「年次決算の経験あり」と言える状態は働き手としての価値が高い
- 求人が増える時期:年度初めや上期・下期の区切りは募集が増えやすい
逆に、決算の真っ最中に辞めるのは引き継ぎ面で苦労しがち。「決算を一区切りつけてから」を意識すると、円満かつ有利に動けます。
求人で見るべきポイント
経理の求人票は、表面的な条件だけで判断すると失敗します。経験者として「ここを見るべき」というポイントです。
| 見るべき項目 | チェックの理由 |
|---|---|
| 担当範囲(記帳のみ?決算まで?) | スキルアップできるか、逆に負担が大きすぎないかを判断 |
| 経理の人数・体制 | 「一人経理」は幅広く経験できるが負担大。複数人だと分業で学べる |
| 使用している会計ソフト | 自分の経験と合うか、新しく覚える必要があるか |
| 残業時間・繁忙期の状況 | 決算期の働き方は要確認。仕事と生活のバランスに直結 |
| 上場・非上場、企業規模 | 求められる専門性(連結・開示など)と年収水準に関わる |
特に「担当範囲」と「経理の人数」は必ず確認を。ここが食い違いの最大の原因です。面接で遠慮なく質問しましょう。
面接で聞くこと
求人票では分からないことは、面接で聞くしかありません。私が必ず聞くのはこの2つです。
- 決算は何月ですか:その会社の忙しい時期が分かります。入社の時期や引き継ぎの重なり方も見えます
- 増員ですか、欠員の補充ですか:増員なら会社が伸びているサイン。欠員なら、前の人がいつ・なぜ辞めたのかが気になるところです
ここからは私の持論です。退職の時期には、その会社の環境が出ます。ふつうは一緒に働く人のことを考えて、繁忙期を避けて辞めるはずです。みんなに迷惑がかかるからです。それでも事情がないのに繁忙期に辞めた人がいる会社は、環境に問題がある可能性が高いと思っています。「欠員の補充です」と言われたら、いつ辞めたのかまで聞いてみてください。
面接でアピールすべきこと
経理の面接では、「何ができるか」を具体的に伝えるのが基本ルールです。
- 担当した業務範囲:「日次〜月次決算まで」「年次決算の補助」など具体的に
- 使えるソフト:freee・マネーフォワード・弥生・各種ERPなど(会計ソフト比較)
- 簿記などの資格:簿記2級・1級は実務力の裏付けになる
- 改善した経験:「月次の締めを◯日短縮した」など、数字で語れると強い
「真面目にやっていました」より、「どこまでを、どのソフトで、どう改善したか」を具体的に話せるかどうかで評価が大きく変わります。
会計ソフトは、名前を挙げるだけでは足りません。どのくらいのレベルで、どこまでできるかが大事です。入力だけなのか、月次の締めまでできるのか、設定まで触れるのか。とくにソフトの導入をやった経験があると評価が高いです。導入は、ソフトの土台から分かっていないとできない仕事だからです。
そして経理以外もできることは、そのまま武器になります。私も、いまは総務・労務・人事を兼任しています。前に勤めた会社では、一般事務や営業事務も担当していました。中小企業は専任の担当を置けないので、「経理もできて、給与計算も社会保険の手続きもできる」人は重宝されます。兼務の経験は、面接で必ず伝えてください。
失敗しない会社選びの注意点
条件が良く見えても、入ってから後悔しないために確認したいポイントです。
- 「経理全般」だけの求人は中身を確認:給与・労務・総務まで丸投げの可能性も
- 常に人手不足で急募の会社は要注意:定着しない理由があるかも
- 年収だけで飛びつかない:業務量・残業とのバランスで判断する
- 口コミや面接の雰囲気も材料に:経理は長く働く職種なので、職場の空気は重要
経理は腰を据えて働く人が多い職種です。だからこそ、目先の条件より「長く気持ちよく働けるか」を軸に選ぶのが、結果的に成功につながります。
もう1つ、私が大事にしているのは面接で感じる空気です。面接官がこわい、働いている人がピリついている、うまく言えないけれど「なんかヤダ」——この感覚は当たっていることが多いです。これも私の持論ですが、自分から動いて、それをきちんと評価してくれる会社かどうかは、結局は働いてみないと分かりません。だからこそ、面接のときの受け答えや、すれ違う社員の表情までよく見てください。
転職とあわせて考えたい「収入の選択肢」
転職は年収アップの定番ですが、それだけが収入を増やす道ではありません。経理スキルは副業でも収入に変えられます。転職と並行して、記帳代行などの副業で収入の柱を増やす人も増えています。
この経験は、副業でこう活きます
転職と副業は、別のことのようで準備はほとんど同じです。
職務経歴書は、そのまま提案文になる
転職のために書いた「どこまでやってきたか」は、副業に応募するときの文章に、ほぼそのまま使えます。
どちらも相手が知りたいことは同じだからです。この人は何ができて、まかせたらどこまでやってくれるのか。
ちがうのは「全部」か「一部」か
転職は、自分という人を丸ごと見てもらいます。副業は切り出した作業だけを渡されます。
だから副業では、「どこからどこまでやるか」をはっきりさせることのほうが大事になります。ここが曖昧なまま始めると、あとで仕事が増えていきます。
転職の前に、副業で試すという順番もある
いまの会社を辞めるかどうか迷っているなら、先に副業で外の仕事を受けてみる、という順番もあります。
よその会社のやり方を見ると、いまの会社が特別なのか、どこも同じなのかが分かります。これは中にいるだけでは分かりません。辞める理由が「仕事の中身」なのか「環境」なのかも、見えてきます(経理を辞める理由)。
現場から経理歴22年の管理人
私自身、いまの会社に入って待遇が変わりました。ただ入ってみて分かったのは、入社時に聞いていた仕事の範囲は、そのままではないということです。私の場合は範囲が広がって、税理士に依頼していた業務の一部まで社内で担当するようになりました。
結果的に役職につながったので悪い話ではありませんが、「求人票の業務内容が全てではない」ことは知っておいたほうがいいと思います。
まとめ
- 経理は「持ち運べるスキル」で転職に有利な職種
- タイミングは「決算を一区切りつけた後」がベスト
- 求人は「担当範囲」「経理の人数」を必ず確認
- 面接は「どこまで・どのソフトで・どう改善したか」を具体的に。兼務の経験も伝える
- 面接では「決算は何月か」「増員か欠員か」を聞く。退職の時期に会社の環境が出る
- 年収だけでなく業務量とのバランスで会社を選ぶ
経理の転職は、準備と見極めさえできれば成功率の高い職種です。自分の経験を整理し、食い違いを避ける目を持って、納得のいくキャリアを選んでいきましょう。
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な見解であり、転職や収入アップを保証するものではありません。求人状況は時期や企業により異なります。2026年6月時点の情報に基づきます。
