「副業の稼ぎが20万円以下なら確定申告しなくていい」——副業界隈で一番有名なルールですが、実は正確に理解している人がかなり少ないルールでもあります。
勘違いしたまま放置すると、後から住民税の申告漏れや延滞税につながることも。この記事では、経理の視点で「20万円ルール」の正しい中身と、よくある勘違い5つを整理します。
20万円ルールの正確な中身
正確に言うと、こういうルールです。
「給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員は、給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてもよい」
ポイントは3つあります。
- 対象は「所得税」の確定申告だけ
- 20万円は「売上」ではなく「所得(売上−経費)」
- 年末調整を受けている会社員が前提
なぜ「所得税だけ」なのかというと、所得税と住民税は、そもそも納める先が違うからです。
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 種類 | 国税 | 地方税 |
| 納める先 | 国 | 住んでいる市区町村・都道府県 |
| 窓口 | 税務署 | 市区町村の役所 |
| 20万円ルール | ある | ない |
20万円ルールは、所得税のほうにだけある特例です。そもそも役所が別なので、片方の手続きが要らなくなっても、もう片方はそのまま残ります。ここが分かると、次に出てくる勘違いがなぜ起きるのかも見えてきます。
勘違い①:住民税の申告も不要だと思っている
これが最も多くて、最も影響の大きい勘違いです。20万円ルールは所得税だけの特例で、住民税には20万円ルールがありません。
つまり副業所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、お住まいの市区町村へ住民税の申告は別途必要です。なお、所得税の確定申告をすればそのデータが自治体に共有されるので、住民税の申告を別にする必要はなくなります。
「少額だから何もしなくていい」ではなく、「少額でも住民税の申告だけは要る」と覚えてください。
現場から経理歴22年・ゆるゴースト
なぜこの勘違いが起きるのか、会社側から見ると分かりやすいです。所得税と住民税は、まったく別のルートで動いているからです。
- 所得税/毎月の給与から天引きして、年末調整で精算する。会社の中で完結します
- 住民税/前の年の所得をもとに市区町村が計算し、5〜6月に会社へ通知が届いて、6月から天引きが始まります
私は毎月、この2つを別々に納めています。相手も、期限も、書式も違います。同じ「税金」でも、まったく別の手続きなのです。
だから「所得税の確定申告が要らない」は、そのまま「住民税も要らない」にはなりません。住民税を計算する側は、あなたの副業の所得を知る手段がない——だから自分で申告しないと、正しい金額が出せないのです。
手続きとしては大きなものではありません。知らずに放っておくのが一番こわいところなので、ここだけは押さえておいてください。
勘違い②:「売上20万円」で判定している
判定は売上ではなく所得=売上−必要経費です。例えば、こうなります。
| ケース | 売上 | 経費 | 所得 | 所得税の確定申告 |
|---|---|---|---|---|
| A | 30万円 | 15万円 | 15万円 | 不要(20万円以下) |
| B | 22万円 | 1万円 | 21万円 | 必要(20万円超) |
売上が大きくても経費を引けば20万円以下、というケースは珍しくありません。逆に言うと、経費の記録がないと自分が申告対象かどうかすら判定できないわけです。記録の重要性は副業の始め方の記事でも強調したとおりです。
勘違い③:医療費控除やふるさと納税があっても20万円以下なら申告しない
医療費控除や住宅ローン控除1年目などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も含めて全て申告する必要があります。
20万円ルールは「確定申告をしなくてもよい」という特例であって、「確定申告するときに20万円以下の所得を省略してよい」という意味ではないからです。ここはふるさと納税にも関わってきます。ただし分かれ目は「20万円」ではなく、「確定申告をするかどうか」です。
- 副業所得10万円で、ほかに確定申告をする理由がない → 確定申告をしない → ふるさと納税はワンストップ特例が使えます
- 副業所得10万円でも、医療費控除などで確定申告をする → その10万円も申告に含める → ふるさと納税も確定申告で寄付金控除として申告し直します(出していたワンストップの申請は無効になります)
同じ「副業所得10万円」でも、確定申告をするかしないかで手続きが変わります。金額ではなく、申告するかどうかで決まると覚えてください。「会社員でもできる節税はある?」——そう思ったら会社員の節税へ。ふるさと納税や控除など、会社員でも使える手が分かります。
勘違い④:フリマやポイントも全部「副業所得」だと思っている(または全部非課税だと思っている)
両極端の勘違いがあります。整理すると:
- 生活用動産の売却(着なくなった服や使わなくなった家具をフリマアプリで売る)は原則非課税
- 転売目的の仕入れ販売(せどり)は課税対象の所得
- 1個30万円超の貴金属・骨董品の売却益は課税対象
「メルカリで売ったら全部申告」でも「フリマは全部非課税」でもなく、営利目的かどうかで線が引かれます。
勘違い⑤:申告しなくてもバレないと思っている
クラウドソーシングやアフィリエイトASP、フリマアプリの事業者には、税務署への支払調書や取引記録の提出・照会の仕組みがあります。2021年からは暗号資産取引所やプラットフォーマーへの情報照会制度も整備され、個人の取引は税務署から見えやすくなる一方です。
無申告が発覚すると、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税が上乗せされます。「バレるかどうか」ではなく「申告が必要かどうか」で判断しましょう。
まとめ:自分がどのパターンか確認しよう
| 副業所得(売上−経費) | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 20万円超 | 必要 | 確定申告すれば不要 |
| 20万円以下でも医療費控除等で申告する | 副業分も含めて申告 | 確定申告すれば不要 |
迷ったら「確定申告してしまう」のが実は一番シンプルです。e-Taxならスマホからでも申告でき、副業の経費がきちんと記録されていれば作業は1〜2時間で終わります。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。税制は改正されます。また同じ内容でも、所得の金額・勤務先の状況・お住まいの自治体によって扱いが変わることがあります。具体的な税務判断は税務署または税理士にご確認ください。制度は2026年6月時点の情報に基づきます。最新情報は国税庁サイトでご確認ください。
