「会社員は節税できない」とよく言われますが、正しくは「自動でやってくれる人がいないだけ」です。会社の年末調整は最低限の控除しか処理してくれません。自分で動けば、手取りは確実に変わります。
この記事では、会社員が使える節税策を「effort(手間)対 effect(効果)」で優先順位をつけて紹介します。上から順に検討してください。
現場から経理歴22年・ゆるゴースト
先に書いておくと、私は控除の話が好きです。年末調整の書類を毎年扱っているせいか、「使えるものは使いたい」と思ってしまいます。
ここに挙げたもののうち、ふるさと納税、生命保険料控除、iDeCo、NISAは自分でもやっています。特別なことはしていません。会社員が普通に手の届く範囲のものばかりです。
ひとつだけ、住宅ローン控除は使っていません。家を買ったことがないからです。それでも書いているのは、会社員が使えるものの中で効きがいちばん大きいからです。自分が使えないものでも、当てはまる人には効くので外しませんでした。
やってみて思うのは、これらは効き方がそれぞれ違うということです。
- 生命保険料控除・iDeCo/課税される所得が減る。今年の税金に効きます
- NISA/税金が減るのではなく、もうけに税金がかからない。効いてくるのは先の話です
- ふるさと納税/税額は減りません。払う先を変えて返礼品をもらう制度です
ここで気をつけたいのが、所得控除は税額をそのまま減らすものではないということです。たとえばiDeCoで年24万円を払っても、税金が24万円減るわけではありません。減るのは「控除額 × 自分の税率」ぶんです。所得税10%・住民税10%の人なら、24万円 × 20% = およそ4万8,000円。税率が高い人ほど効きが大きくなります。
ひとまとめに「節税」と呼ばれますが、中身は別ものです。どれか一つやれば十分、というものではありません。だから私は、手が届くものは全部やっています。
節税の話でいちばん多い誤解を先に書いておきます。控除は「税金を少なくする」しくみで、お金がもらえる制度ではありません。控除の金額が大きくても、実際に払った税金より多く戻ってくることはありません。「保険に入れば戻ってくる」「◯◯すればお得」という話を見たときは、まずここを思い出してください。そもそも所得税や住民税がかかっていない人は、控除を増やしても戻るものがありません。
優先度S:ふるさと納税(手間:小/効果:確実)
厳密には節税ではなく「税金の前払い+返礼品」ですが、実質負担2,000円で寄附額の約3割相当の返礼品がもらえるため、やらない理由がほぼありません。
- 控除上限額は年収と家族構成で決まる(各ポータルサイトのシミュレーターで確認)
- 寄附先が5自治体以内なら「ワンストップ特例」で確定申告不要
副業をしている人への重要な注意:確定申告をすると、ワンストップ特例の申請は全て無効になります。副業所得が20万円を超える人だけでなく、医療費控除などの理由で確定申告をする人も同じです。確定申告をするなら、ふるさと納税の寄附金控除も確定申告に含めて申請し直す必要があります。忘れると自己負担2,000円では済まなくなるので要注意です(20万円ルールの記事も参照)。
優先度S:新NISA(手間:小/効果:大・長期)
2024年に始まった新NISAは、運用益が無期限で非課税になる制度です。通常、投資の利益には約20%の税金がかかるので、長期で見ると非課税効果は非常に大きくなります。
| 枠 | 年間投資上限 | 対象 |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 金融庁基準を満たす投資信託 |
| 成長投資枠 | 240万円 | 上場株式・投資信託など |
生涯投資枠は1,800万円。まずは「つみたて投資枠で低コストのインデックスファンドを毎月積立」が定番です。投資なので元本保証はありませんが、節税口座として使わない手はありません。
優先度A:iDeCo(手間:中/効果:大・ただし60歳まで引き出せない)
iDeCo(個人型確定拠出年金)の最大の魅力は、掛金が全額所得控除になることです。例えば月2.3万円(年27.6万円)を拠出する会社員(所得税率10%)の場合、所得税+住民税でおおよそ年5.5万円前後の税負担が軽くなります。
そしてもう一つ、受け取るときの話です。iDeCoは掛けている間は税金が軽くなりますが、受け取るときに税金がかかることがあります。一時金で受け取れば退職所得、年金の形で受け取れば雑所得として扱われ、それぞれ控除はありますが、会社の退職金と合わせて計算されたり、受け取る順番や間隔によって使える控除の枠が変わったりします。ここのルールは見直されることもあるので、受け取りが近づいたら必ず最新の内容を確認してください。入口(掛金が全額所得控除)だけを見て決めないほうが安全です。
また原則60歳まで引き出せないため、住宅購入や教育費などの資金計画と相談して金額を決めてください。優先順位としては「ふるさと納税・NISAをやったうえで、余裕資金があれば」が現実的です。
優先度A:住宅ローン控除(効き方がほかと違います)
家を買ってローンを組んでいる人は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があります。これはほかの控除と効き方がまったく違うので、分けて書きます。
- 所得控除(生命保険料控除・iDeCoなど)/課税される所得が減る。減る税金は「控除額 × 税率」ぶん
- 住宅ローン控除/税額そのものから直接引かれます(税額控除)。同じ金額なら、こちらのほうが効きます
年末のローン残高に応じて計算され、金額としては会社員が使える中で最大級です。手続きは1年目だけ確定申告が必要で、2年目からは年末調整でできます。
ただし対象になる住宅の種類・入居した年・所得の上限などで条件が細かく変わり、たびたび改正されています。自分が対象かどうかは、必ず国税庁のページで確認してください。
優先度A:年末調整で漏れがちな控除を拾う
経理として年末調整を見ていると、申告し忘れが本当に多いのがこのゾーンです。
- 生命保険料控除・地震保険料控除:保険会社から届くハガキの出し忘れ
- 扶養控除:親への仕送り(同居していなくても要件を満たせば対象)
- 障害者控除:本人・家族が対象になるケースの見落とし
- iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除):証明書の出し忘れ
年末調整で出し忘れても、確定申告(還付申告)で5年までさかのぼって取り戻せます。
優先度B:医療費控除・セルフメディケーション税制
年間に払った医療費が10万円を超えた分は、医療費控除の対象になります(総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%が基準です)。本人だけでなく生計を一にする家族全員の医療費を合算できるのがポイント。通院の交通費(公共交通機関)も対象です。
基準に届かない場合でも、対象の市販薬の購入が年間1.2万円を超えていれば、セルフメディケーション税制(上限8.8万円)が使える場合があります。どちらか一方しか選べません。金額や対象になる薬は決まっているので、使う前に国税庁のページで確認してください。
優先度B:副業の経費を正しく計上する
副業をしているなら、経費の計上は合法的かつ効果の大きい節税です。副業に使った通信費・書籍代・機材費・自宅作業スペースの家賃按分などは、実態と根拠(領収書・記録)があれば経費にできます。
逆に、実態のない「なんでも経費」は税務調査で否認され、加算税の対象になります。「事業との関連を説明できるか」が判断基準です。
まとめ:今日やることリスト
- ふるさと納税の控除上限額をシミュレーターで確認する
- NISA口座を開設し、つみたて投資枠の積立設定をする
- iDeCoは資金計画と相談して検討する
- 年末調整の控除漏れがないか過去分も見直す(5年さかのぼれる)
- 医療費の領収書・通院記録を家族分まとめて保管する習慣をつける
節税は「知っているか・動くか」だけの差です。1つずつで構わないので、今日できるものから着手してみてください。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談や投資勧誘ではありません。税制は改正されます。また同じ内容でも、所得の金額・勤務先の状況・お住まいの自治体によって扱いが変わることがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。制度は2026年6月時点の情報に基づきます。最新情報は国税庁・金融庁のサイトでご確認ください。
