「経理に興味があるけど、未経験から本当になれるの?」——結論からお伝えすると、未経験から経理になることは十分可能です。私の周りでも、別職種や主婦から経理に入って活躍している人は何人もいます。
ただし、「何の準備もなく」となると話は別。経理歴22年の視点で、未経験から経理になるために必要な準備とステップを、年代別の現実も含めてありのままに書いていきます。
私は経理だけでなく人事も担当してきました。面接には同席するだけでなく、面接官として会社の説明や仕事内容の説明をして、私が面接をしたこともあります。自分自身も何度か転職しています。採る側と受ける側の両方から見た話を書きます。そして最後に、経理になったあと、その経験をどう副業につなげるかまで書きました。
未経験でも経理になれる3つの理由
まず、なぜ未経験でもチャンスがあるのかを押さえましょう。
- 経理はどの会社にも必要:業種を問わず一定の求人が常にある
- スキルが明確で勉強しやすい:簿記という体系化された知識で「やる気」を示せる
- 一度身につければ長く働ける:年齢を重ねても経験が活きる職種
特に「簿記という資格で意欲と基礎力を客観的に示せる」のは、未経験者にとって大きな武器です。営業や接客のような「センス」で測られる職種と違い、経理は努力が資格という形で見えるからです。
未経験から経理になるステップ
ステップ1:簿記3級を取る
まず最初の一歩は簿記3級の取得です。これは「経理をやる意欲と基礎知識がある」ことを示す、未経験者の一番確かな武器。独学で50〜100時間、数千円のテキスト代で取れます(簿記3級を独学で取る方法)。
求人に「簿記3級以上」と書かれていることも多く、3級があるかないかで応募できる求人の数が変わります。まずはここからです。
ひとつ補足です。新卒の方や20代の方は、簿記がなくても採用されることがあります。「これから育てる」前提で募集している会社があるからです。その場合、面接では明るくはきはき受け答えできるか、一緒に働けそうかがよく見られます。もちろん簿記があれば、それに越したことはありません。
一方、社会人経験のある方は、これまで働いてきた経験そのものが大きな武器です。そこに簿記が加わると「入ってすぐ動ける人」として見てもらえます。大事なのは年齢よりも、今までの経験と意欲をどう見せるかです。
現場から経理歴22年の管理人
独学のほかに、職業訓練校という道もあります。私は3回通いました。
転職の合間に、そのつど通っています。簿記3級のコースに通ったのも、失業していたときでした。授業料は基本的にかからず(テキスト代などは自己負担)、条件を満たせば手当が出る場合もあります。お金をかけずに勉強できる期間だと思えば、使わない手はありません。
通ってよかったのは、毎日決まった時間に机に向かう形ができることです。独学だと後回しにしてしまうところを、時間割が引っ張ってくれます。同じ立場の人が周りにいるのも、思っていたより効きました。ひとりで焦っているより、ずっと気が楽です。
ただし、受けられる条件や、次に受けられるまでの間隔には決まりがあります。地域やコースによっても違うので、気になる場合はハローワークで確認してください。
ステップ2:できれば簿記2級まで
3級で応募の土俵には立てますが、2級まで取ると採用の確率がぐっと上がります。特に未経験で30代以降の場合、「2級を持っている=本気度が高い」と評価されやすいです。すぐにでも転職したいなら3級で動き出し、並行して2級を目指すのがおすすめです。
ステップ3:会計ソフトに触れておく
今の経理はクラウド会計ソフトが中心です。freeeやマネーフォワードの無料お試しで操作に触れておくと、面接で「ソフトを使ったことがある」と言えて好印象です(会計ソフト3社比較)。実務のイメージもつかめます。
面接をする側にいた経験から言うと、未経験で応募してくる人のうち、事前にソフトを触ってきた人はほとんどいません。私は会ったことがありません。だからこそ、無料のお試しで少し触っておくだけで、それだけでやる気が伝わります。難しい操作を覚える必要はありません。「画面を見たことがある」「入力の流れが分かる」だけで十分です。
ステップ4:求人を探す・応募する
未経験者は「未経験歓迎」「経理アシスタント」「経理補助」といった求人を狙うのが現実的です。いきなり経理リーダーは難しくても、補助からスタートして経験を積むのが定番ルート。最初の1社で実務経験を作れば、その後の選択肢は一気に広がります。
ただし「未経験歓迎」の求人は、これから育てる前提で、若い人を想定しているものも多いのが実際のところです。社会人経験のある方は、入口を経理だけに絞らないほうが早く決まります。
入口を「経理一本」に絞らない
① 「事務+経理」の求人を狙う
- 一般事務+経理
- 総務+経理
- 営業事務+経理
- 総務・庶務+経理
- 管理部門スタッフ
いきなり「経理職」一本で探すより、これまでの社会人経験を活かせる求人のほうが通りやすいです。入ってから経理の担当を増やしていく道もあります。私自身、いまは経理と一緒に総務・労務・人事も担当しています。前に勤めた会社では、一般事務や営業事務が中心のこともありました。中小企業ではこの形がふつうです。
② 検索の条件を組み合わせる
- 年齢不問
- 中高年活躍中
- シニア活躍中
- 主婦・主夫歓迎
- ブランクOK
- 経験不問
「未経験歓迎」だけで探すと、出てくる求人がかたよります。上のような条件を足すと、これまでの経験を評価してくれる会社が見つかりやすくなります。
大事なのは「若くないと無理」とあきらめることではなく、入口を経理一本に絞らないことです。事務+経理で入って実務経験を作れば、次は経理職として動けます。
未経験者の志望動機はどう書く?
面接でよく問われるのが「なぜ経理を?」です。未経験者は次の3点を盛り込むと説得力が出ます。
- なぜ経理なのか:「コツコツ正確な作業が得意」「数字で会社を支えたい」など、適性と結びつける
- すでに動いている証拠:「簿記3級を取得した/勉強中」という具体的な行動
- 前職の経験との接続:「前職の事務で正確性を磨いた」など、活かせる強みを示す
「なんとなく安定してそうだから」では弱い。「適性+すでに行動している」を示せると、未経験でも一気に評価されます。
志望動機の組み立て方
順番はこの4つです。
- なぜ経理なのか
- これまでの仕事で培った経験
- その経験が経理でどう活かせるか
- 未経験の部分をどう補うか
例文です。
これまで事務の仕事を通じて数字を扱う機会が多く、正確に仕事を進めることにやりがいを感じてきました。以前から経理の仕事に興味があり、簿記の学習を始めたことをきっかけに、経理の専門知識を身につけたいと考えるようになりました。これまで培ってきた正確さや責任感、周囲と連携して仕事を進める経験を活かしながら、未経験の業務についても一つずつ学んでいきたいと考えています。
そのうえでもう一歩。求人票に書かれた仕事の中に、自分がやってきたことと重なる部分があれば、そこは「できます」と言い切るくらいでちょうどいいです。データ入力、電話対応、書類の管理、Excelでの集計——事務の経験があるなら、経理の仕事のいくつかはすでに経験ずみです。そのうえで、経理そのものは未経験だと分かっているので、学ぶ意欲は強めに伝えます。この組み合わせがいちばん伝わります。
社会人経験がある人は「仕事そのものは未経験ではない」
「未経験だから何もできません」ではなく、「経理は未経験ですが、仕事そのものは未経験ではありません」という見せ方をします。今までの仕事から、経理につながるものを拾ってください。
| 今までの仕事 | 経理につながる強み |
|---|---|
| 接客 | 人と向き合う力・責任感 |
| 営業 | お客様対応・数字への意識 |
| 一般事務 | パソコン・書類管理・正確さ |
| 製造 | 手順を守る力・品質の管理 |
| パート・家庭のやりくり | 続ける力・段取り |
そして「簿記を勉強しています」で止めないこと。「実務で活かせるように、簿記の学習を続けています」まで言います。同じ勉強でも、仕事につなげて話せるかどうかで受け取られ方が変わります。
正社員にこだわらない。パート・契約社員・派遣から入る
未経験でいきなり正社員の経理を狙うと、かなり狭き門になります。だから入口を変えます。
- パート・契約社員・派遣の経理事務から始める
- 仕訳の入力、伝票の整理など範囲を区切った仕事から入る
- 在宅の経理の仕事で、仕訳入力から経験を作る
経理は「実務をやったことがあるか」がものを言う仕事です。1年でも実務があると、次に応募するときの扱いがまったく変わります。まず経験を作って、そこから正社員を目指す——この順番のほうが、結果的に早いです。
これまでの職歴がある方は、「簿記+今までの経験」の合わせ技で見てもらえます。事務の経験があるなら事務の部分は即戦力ですし、接客や営業の経験があるなら、社内外とのやり取りで役に立ちます。
職歴が少ない・ブランクがある人のアピールの仕方
職歴の欄が短くても、何もしないで月日が過ぎたわけではありません。やってきたことを、仕事の言葉に置きかえて伝えてください。
| やってきたこと | 仕事の言葉に置きかえると |
|---|---|
| 子育て | 段取り・時間のやりくり・急な変更への対応 |
| PTAや子ども会の役員 | 会計や名簿の管理・人との調整・期限を守る力 |
| 学生時代から長く続けたスポーツ | 続ける力・地道な積み重ね・チームで動く力 |
| 長く続けている趣味 | 集中して細かい作業ができる・自分で調べて覚える力 |
とくにPTAで会計を担当した経験は、そのまま話せます。お金を預かって、集めて、記録して、報告する。やっていることは経理と同じです。実際、こういう話をきちんと伝えられる人は、面接で評価されます。
年代別の現実【30代・40代・主婦からでも遅くない?】
本当のところを年代別にお伝えします。
| 年代・属性 | 現実 |
|---|---|
| 20代 | 若さと伸びしろで採用されやすい。簿記3級でも十分チャンス |
| 30代 | 簿記2級+前職の事務経験があると有利。十分目指せる |
| 40代 | ハードルは上がるが、簿記2級+パート・派遣から実務を作る道がある |
| 主婦・ブランクあり | パート経理・在宅経理から復帰する人は多い。簿記が後押しになる |
年代が上がるほど「資格+本気度の証明」が重要になりますが、40代・主婦からでも経理デビューしている人は実際にたくさんいます。パートや派遣で実務経験の入口を作るのが、遠回りに見えて確実なルートです。
入ってから、どれくらいで慣れる?
「なれるかどうか」と同じくらい気になるのが、入ったあと、いつになったら楽になるのかだと思います。ここは実際にやった人でないと書けないところなので、そのままお伝えします。
現場から経理歴22年の管理人
私の場合は、こんな順番で分かってきました。
- 2か月/月の仕事の流れが分かる。毎月おなじことをくり返すので、ここは早いです
- 1年/年の流れが分かる。決算や年末調整まで一周すると、1年の形が見えます
- 1年半/「なんとなく大丈夫かな」と思えてきました
- 2年目/全部ひとりでできるわけではありません。でも次に何があるかは分かるようになります
ただし、スピードはまだまだかかります。「分かる」と「速くできる」は別ものです。
ここで知っておいてほしいのは、「できる」=全部ひとりでやれること、ではないということです。まずは「次に何があるか分かる」状態を目指せば十分です。
経理は毎月・毎年くり返す仕事です。だから一周すれば見通しが立ちます。最初のしんどさには、ちゃんと終わりがあります。
私が最初につまずいたのは、この2つ
① 仮払金・仮受金・未払金・未収金
似た言葉が4つならんでいて、どれを使えばいいのか分かりませんでした。いま整理すると、見るところは2つだけです。
| お金はもう動いた | お金はまだ動いていない | |
|---|---|---|
| 出ていく | 仮払(仮に払った) | 未払(まだ払っていない) |
| 入ってくる | 仮受(仮で受けた) | 未収(まだ受け取っていない) |
「お金がもう動いたか、まだか」と「入るのか、出るのか」。この2つで決まります。4つを言葉として覚えようとすると、かえってこんがらがります。
ただ、当時の私が本当につまずいていたのは、勘定科目の意味ではありませんでした。会社の取引そのものを知らなかったことです。
会社にお金が入っていても、それが何の入金なのか分からなければ、どの科目にすればいいか決められません。逆に先に払っていても、何のために払ったのか、最後は何の費用になるのかが分からなければ、仮払金なのか前払費用なのか判断できません。
つまり経理は、勘定科目を覚えるだけでは足りません。その会社が何を売っていて、誰とどんな取引をしていて、そのお金が何のために動いたのかを知ることが必要です。ここが分かってくると、「この入金は何のお金だろう」と調べるときも、取引の流れから見当がつくようになります。
だから経理を始めたばかりのうちは、分からない仕訳をいきなり暗記するより、「このお金は、誰から・何のために・いつ・なぜ動いたのか」を確認する癖をつけるほうが近道です。
② 経費なのか、仕入なのか
本音を言うと、これは22年やっているいまでも、はっきりしない場面があります。簿記の知識だけでは決まらず、「それを何に使うのか」という事実を確認しないと判断できないからです。分からないのは、あなたの理解が足りないからではありません。
現場から経理歴22年の管理人
分からないとき、私は「分かりません」とだけ聞きに行くことはしませんでした。
仮払・仮受・未払・未収は、まず自分で答えを出してから、税理士に確認しました。経費か仕入かは、買った本人に「これ、何に使うんですか」と聞いてから、上司に相談しました。
自分の答えを持っていくと、聞くのが怖くなくなります。そして「なぜそう考えるか」まで教えてもらえるので、次からは自分で判断できるようになります。
経理になった後の広がり
経理は「なって終わり」ではなく、その先にも道が広がります。
- 経理のキャリアアップ:補助→担当→主任→管理職、専門性を深める
- 在宅・パートで柔軟に働く:人生の段階に合わせやすい(在宅経理の仕事内容)
- 経理スキルで副業する:記帳代行など、経験を副業収入に変える(経理副業の案件の探し方)
つまり、未経験から経理に入ることは「一生もののスキルの入口」に立つということ。長い目で見て、コスパの良いキャリア選択だと思います。
この経験は、副業でこう活きます
未経験から経理になった人が、そのあと副業まで進むとき。順番をまちがえないことが大事だと思っています。
いきなり副業から始めない
経理の副業は、聞ける相手がいない状態で判断する仕事です。会社なら上司や税理士さんが最後に見てくれますが、副業では出した数字がそのまま相手の帳簿になります。
だからまず会社で1年まわすことをおすすめします。決算も年末調整も一度は見た、という状態になってからのほうが、受けたあとが楽です。
1年まわると、書けることが増える
この記事に書いたとおり、2か月で月の流れ、1年で年の流れが分かります。そこまで来ると、応募するときにこう書けます。
「月次の締めから試算表まで、1年ぶん通してやりました。年末調整も一度経験しています」
未経験で始めた人でも、1年たてばこれが書けます。資格より具体的で、相手に伝わります。
「できる」の意味は、副業でも同じ
全部を1人でやれることではなく、次に何が来るか分かること。副業でも、これができる人が続けて頼まれます。
まとめ
- 未経験から経理になることは十分可能
- 最初の一歩は簿記3級。できれば2級まで取ると採用率が上がる
- 会計ソフトに触れておくと面接で有利
- 志望動機は「適性+すでに行動している証拠」を示す
- 30代・40代・主婦からでも、資格と本気度で道は開ける
- 入口は経理一本に絞らない。「事務+経理」や「年齢不問」「ブランクOK」も組み合わせて探す
- 正社員にこだわらず、パート・契約社員・派遣で実務経験を作る
- 入ってからは2か月で月の流れ、1年で年の流れが見えてくる
経理は、努力が資格と経験という形で確実に積み上がる職種です。「未経験だから」とあきらめず、まずは簿記3級の勉強から、一歩を踏み出してみてください。
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な見解であり、採用や転職の成功を保証するものではありません。求人状況・採用基準は時期や企業により異なります。2026年6月時点の情報に基づきます。
