「経理ってExcelをどのくらい使うの?」「どんな関数を覚えればいい?」——経理を目指す人からよく聞かれる質問です。
会計ソフトが普及した今でも、経理とExcelは切っても切れない関係です。ソフトから出したデータの加工、資料作成、チェックなど、Excelが使えるかどうかで仕事の速さが大きく変わります。この記事では、経理歴22年の現役経理が実務で本当に使うExcelスキルを、ムダなく厳選して紹介します。ここで書く使い方は、副業の記帳代行でそのまま時間の差になります。最後にその話も書きました。
経理はどんな場面でExcelを使う?
まず「どこで使うのか」をイメージしましょう。会計ソフトがあるのに、なぜExcelが要るのか。
- 会計ソフトから出したデータの加工・集計:CSVで出力して並べ替え・集計
- 月次資料・管理資料の作成:経営者向けに数字を見やすくまとめる
- 残高や数字の照合(チェック):2つのデータを突き合わせてズレを探す
- 予算と実績の比較表:予算と実績の管理の資料づくり
つまり、会計ソフトが「記録」、Excelが「分析・加工・チェック」という役割分担です。両方使えてはじめて、経理の仕事はスムーズに回ります。
現場から経理歴22年の管理人
意外に思われるかもしれませんが、経理になってからのほうが、Excelを使う量は減りました。
いちばん使っていたのは営業事務をしていたころです。在庫の管理表、原価の一覧、納期の管理表。数字を並べて動きを追いかける表を、毎日いじっていました。
いまの経理でExcelを使っているのは、こんなところです。
- 毎月おなじ形で数字だけ変わる仕訳をExcelで作り、会計ソフトにCSVで取り込む/10日・20日・末日の支払、給与、賞与、借入金の返済、仕入、売上、棚卸、社会保険など
- 人事ソフトから社員情報を出力して、自分用のリストに貼る(選び間違いを防ぐためドロップダウンリストにしています)
- 借入金の返済管理表/利率と日数から、利息・元利・残高を出す
- 消費税の端数処理/切り上げ・切り捨て・四捨五入は本当によく使います
ほかに、基幹システムから出したデータをExcelを経由して会計システムに取り込む仕組みもあります。ただしマクロは自分では書けません。作ってもらったものを使っています。
つまり経理のExcelは、きれいな資料を作るためというより、「同じ作業をくり返さないため」に使っている感じです。1回作れば、あとは数字を入れ替えるだけ。ここが営業事務のころとの違いだと思います。
経理が必ず覚えたいExcel関数
数ある関数のうち、経理実務で「これは必須」というものだけを厳選しました。まずはこの5つから。
| 関数 | 使う場面 |
|---|---|
| SUM | 合計。全ての基本 |
| SUMIF / SUMIFS | 条件に合う数字だけ合計(勘定科目別・部門別の集計など) |
| VLOOKUP / XLOOKUP | 別の表から該当データを引っ張ってくる(コードから名称を呼び出すなど) |
| IF | 条件で処理を分ける(差額があれば「要確認」と表示など) |
| ROUND | 端数処理(消費税計算などで必須) |
この中でもSUMIFとVLOOKUP(またはXLOOKUP)は出番が多く、集計とデータ照合のスピードが変わります。まずはこの2つから触ってみてください。
ただし今は、関数を全部覚えなければいけない時代ではありません。書き方が分からなければAIに聞けば教えてくれます。
そのかわりに要るのが、「自分が何をしたいのか」を言葉にする力です。「この表の、この列を、この条件で合計したい」——ここが自分の中で整理できていないと、AIに聞いても欲しい答えは返ってきません。覚える力より、頼み方を組み立てる力のほうが効いてくると感じています。
関数より先に「機能」を覚えると速い
関数と同じくらい、いや、人によってはそれ以上に役立つのが次の機能です。
ピボットテーブル
大量のデータを、ドラッグ操作だけで集計・分析できる機能です。勘定科目別・月別・取引先別の集計が一瞬。関数を組まなくても、マウス操作で多角的な集計表が作れます。私が実務でいちばんおすすめしたい機能です。
フィルター・並べ替え
大量の仕訳データから「特定の科目だけ」「金額が大きい順」などを瞬時に抽出。データチェックの効率が段違いになります。
条件付き書式
「差額がある行を自動で色付け」など、ミスやいつもと違う点を目で見つけやすくします。チェック作業の精度とスピードが上がります。
現場から経理歴22年の管理人
ひとつ、気をつけてほしいことがあります。Excelが得意なことと、経理ができることは別です。
どれだけ速く集計できても、その数字が何を意味しているのかが分からなければ、正しい資料にはなりません。「この金額はいつの、何の取引なのか」が分かって、はじめてExcelが役に立ちます。
順番は取引の中身を知る → 数字の意味が分かる → Excelで形にするです。逆から始めると、見た目はきれいなのに中身の合っていない表ができあがります。しかも合っていないことに気づけません。
だから、Excelの勉強が進まなくて焦る必要はありません。先に覚えるのは、会社の取引のほうです。
経理のExcelでミスを防ぐコツ
経理のExcelは「速さ」より「正確さ」が命です。経験上、ミスを防ぐために意識していることを紹介します。
- 手入力をできるだけ減らす:関数やコピーで「人が打つ数字」を最小化する
- 合計の検算をする:縦横の合計が一致するか(クロスチェック)を必ず確認
- セルの結合を多用しない:集計やコピーでトラブルの原因になりやすい
- 元データは触らず、別シートで加工する:原本を壊さない癖をつける
- 数式が入ったセルを誤って上書きしない:必要なら保護をかける
「キレイな表」より「間違えにくい・後で見直せる表」を作るのが、経理のExcelの考え方です。
Excelスキルはどう身につける?
経理のExcelは、本を1冊読むより「実際の作業で使いながら覚える」のが一番です。とはいえ、独学の入口としてはこんな進め方がおすすめです。
- まずSUMIFとVLOOKUP(XLOOKUP)を使えるようにする
- ピボットテーブルで集計に慣れる
- フィルター・条件付き書式でチェック作業を効率化
- あとは実務で出てきた「これ自動化できないかな?」を一つずつ調べる
全部を一度に覚える必要はありません。必要になった機能から、その都度身につけていくのが、結局一番定着します。簿記の知識(簿記3級・簿記2級)とExcelスキルの両輪がそろうと、経理としての働き手としての価値はぐっと上がります。
この経験は、副業でこう活きます
Excelが得意なことと、経理ができることは別です。ただここで書いた使い方は、そのまま副業の時間に効いてきます。
「毎月おなじ形」を作れると、2か月目から速くなる
副業の記帳代行は、多くが月いくらの決まった金額です。つまり速く終わらせたぶんだけ、自分の時間あたりの手取りが上がります。
1か月目に「数字を入れ替えるだけ」の形を作っておけば、2か月目からの手間はぐっと減ります。毎月ゼロから手で入力している人と、ここで差がつきます。
受けるときに言えること
「毎月おなじ内容のものは、取り込み用の形を作ってまとめて入れます。1か月目に形を作らせてください」
こう言えると、相手も「慣れている人だ」と分かります。実際、こちらも2か月目から楽になります。
ただし、順番を間違えないこと
形を作るのは、取引の中身が分かったあとです。中身を分かっていないのに表だけ作ると、まちがった数字をきれいに並べることになります。1か月目は、手で1件ずつ見るくらいでちょうどいいと思っています。
現場から経理歴22年の管理人
私が実際に毎日使っているのは、ドロップダウンリスト(入力規則)・ショートカット・ピボットテーブル・条件付き書式の4つです。難しい関数を覚えるより、この4つを使えるほうが仕事は確実に速くなります。
それと最近は、関数の書き方が分からないときはChatGPTに聞いています。「こういう表から、こう集計したい」と伝えれば関数を教えてくれるので、関数を暗記することの意味は、昔より小さくなったと感じています。
まとめ
- 会計ソフトは「記録」、Excelは「分析・加工・チェック」の役割
- 必須関数はSUMIFとVLOOKUP(XLOOKUP)の二大関数から
- 関数より先に、ピボットテーブル・フィルターを覚えると速い
- 経理のExcelは「正確さ・見直しやすさ」を最優先
- 全部覚えず、必要になった機能から身につけるのが定着のコツ
Excelは、経理の仕事を速く・正確にする強力な相棒です。難しく考えず、まずはSUMIFとピボットテーブルから。使えるようになると、経理の仕事が一段ラクになります。
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な解説です。Excelの機能名・操作は、お使いのバージョンにより異なる場合があります。2026年6月時点の情報に基づきます。
