「経理に興味はあるけれど、続けられるか不安」「今の職場を辞めたい。でも経理という仕事が合っていないのかも」——どちらもよく聞く悩みです。
経理歴22年で、辞めていった人も、長く続けた人も見てきました。その中ではっきり分かったことがあります。経理を辞める理由は、仕事の中身ではないことがほとんどです。
「経理が嫌だから辞める」という人は少ない
辞めていった人の理由を思い返すと、「仕訳が嫌になった」「数字が苦手で辞めた」という人を、私はほとんど見たことがありません。
もちろん「経理そのものが合わなかった」という人もいます。ただ、その場合はもっと早い段階で分かります。数字を見るのがつらい、細かい確認が続くのが苦しい——こういう人は、最初の数か月で気づきます。「自分は経理に向いている?」——そう思ったら経理に向いている人・向いていない人へ。向いている人・向いていない人の特徴が分かります。
問題は、何年か続けた人が辞めていくときです。この場合、理由はたいてい別のところにあります。
実際に多かった、辞める理由
① 人間関係。とくに同じ事務の人とうまくいかない
経理は少人数で動く仕事です。だからこそ、近くにいる人との関係がそのまま毎日にひびきます。同じ事務の人と合わない、話しかけづらい、ちょっとしたことを聞けない。この状態が続くと、仕事そのものが苦しくなります。
経理の仕事は、聞かないと進まない場面がたくさんあります。「これは何のお金ですか」と確認できないと、仕事が止まります。聞けない環境は、経理にとって思っている以上に致命的です。
② 上司に相談しても解決しない
困って上司に相談したのに、何も変わらない。これが続くと、人は静かにあきらめます。「言ってもむだだ」と思った時点で、その人の中では終わっています。
辞める人は、辞める直前に不満を言うわけではありません。その前に一度は相談していることが多いです。そこで動かなかった会社から、人は出ていきます。
③ 家庭の事情
家族の介護、配偶者の転勤、実家の事業を手伝うことになった——本人が望んでいなくても、辞める選択をすることがあります。これは会社にも本人にもどうにもできない理由です。
④ 頑張っても評価も給料も変わらない
仕事を覚えても、量をこなしても、評価も給料もそのまま。この状態が長く続くと、続ける理由がなくなります。経理の年収とキャリアパスでは5つの方法とキャリアの選択肢をまとめています。「経理の年収はどう上げる?」と迷ったときに読んでみてください。
現場から経理歴22年・ゆるゴースト
辞めた人を思い出すと、最後の一押しはいつも人でした。仕事の量が多い時期は、みんな意外と辞めません。忙しくても、周りと助け合えていれば続きます。逆に、仕事が落ち着いていても、聞けない・相談できない職場だと人は減っていきます。
長く続いた人に共通していたこと
反対に、続いた人にはこういう共通点がありました。
- 分からないことを、自分の考えを持ってから聞ける:「分かりません」だけではなく「こうだと思うのですが」と持っていける
- 期限を守る:経理は日が決まっている仕事が多く、ここを守る人は信頼されます
- 1人で抱えこまない:おかしいと思ったら早めに出す
- 仕事とその会社を分けて考えている:会社に不満があっても、経理の力そのものは自分に残ると分かっている
とくに最後が大きいです。経理のスキルは会社のものではなく、自分のものです。ここが分かっている人は、必要以上に追いつめられません。
「辞めたい」と思ったときに確認したい3つ
辞める前に、原因がどこにあるのかを分けて考えてみてください。
| どこがつらいか | できること |
|---|---|
| 仕事の中身(数字・確認作業そのもの) | 職種を変えることも選択肢。ただし本当に中身が原因かは要確認 |
| 人(同僚・上司) | 部署の異動、担当の変更、転職。会社を変えると解決することが多い |
| 評価・給料 | 資格や決算の経験を積んで交渉、それでも変わらないなら転職 |
人と環境が理由なら、辞めるのは逃げではありません。経理の経験は次の会社にそのまま持っていけます。次に「転職先はどう選べばいい?」が気になったら、経理の転職を成功させるコツへ。求人の見方と面接で聞くことまで書いています。
辞める前に、収入の柱を増やす手もある
「今すぐ辞めたいわけではないけれど、この先が不安」という場合は、副業で収入の柱を増やしておくのも現実的です。経理の経験は、記帳代行や在宅の経理としてそのまま使えます。
収入の入口が2つあると、「辞めるか続けるか」を落ち着いて選べるようになります。
辞めると決めたら、時期と引き継ぎだけは考える
辞めること自体は悪いことではありません。ただ、経理は時期によって引き継ぎの重さがまったく違います。
- 決算の真っ最中:引き継ぎがいちばん重い。自分もつらく、残る人も困る
- 決算が終わったあと:区切りがよく、引き継ぎもしやすい
- 年末調整の前後:ここも1年に1回の仕事が重なる時期
事情があるなら時期は選べません。それでも選べるなら、ひとつの決算を終えてからが本人にとっても得です。「年次決算の経験あり」と言える状態は、次の会社で強い材料になります(経理の転職を成功させるコツ)。
引き継ぎで残しておくと喜ばれるのは、手順書よりも「なぜそうしているか」です。この取引先だけ処理が違う理由、去年こう直した理由。ここが残っていると、次の人が迷いません。
まとめ
- 経理を辞める理由は、仕事の中身ではないことがほとんど
- 多いのは人間関係、相談しても解決しないこと、家庭の事情、評価と給料
- 続いた人は「聞ける」「期限を守る」「抱えこまない」「仕事と会社を分けて考える」
- つらさの原因が人や環境なら、辞めるのは逃げではない
- 経理のスキルは会社ではなく自分に残る
「経理が向いていないのかも」と思ったとき、本当に合っていないのは仕事ではなく、その場所かもしれません。そこを分けて考えるだけで、選べる道はぐっと増えます。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者が現場で見てきた範囲の一般的な内容であり、職場の状況は企業により異なります。2026年8月時点の情報に基づきます。
