事務の仕事は、うまくいって当たり前だと思われます。請求書が期日どおりに出て、給与が正しく振り込まれて、支払いが遅れない。できていても、誰も何も言いません。ミスをしたときだけ声がかかります。
これは、事務職をやっている人なら一度は感じたことがあるはずです。経理歴22年の立場から、新しく事務や経理を始める人に、最初に伝えたいことを書きます。あわせて、社内で評価されにくい仕事が、副業では値段のつく仕事になるという話も最後に書きました。
「やって当たり前・できて当たり前」と思われる仕事
事務の成果は、目に見えにくいものです。営業のように売上という数字が出るわけでもなく、作った物が残るわけでもありません。
それどころか、うまくいっているときほど、何も起きていないように見えます。期日に間に合ったことも、数字が合っていることも、当たり前として流れていきます。
だから、こういう気持ちになる人が多いです。
- どれだけ丁寧にやっても、誰も気づかない
- ミスをしたときだけ言われる
- 「事務なんて誰でもできる」と思われている気がする
実際、そう思っている人もいます。それは事実なので、否定しません。
でも、見ている人は結構いる
ここからが伝えたいことです。見ている人は、思っているよりずっといます。
私が見てきたかぎり、こういう場面で「この人はきちんとやる人だ」と伝わります。
- 期限を一度も外さない:支払い、給与、届出。日が決まっているものを守り続ける人は、それだけで信頼されます
- 頼んだことが、いつのまにか終わっている:催促がいらない人は、覚えてもらえます
- 数字が合っている:合っているのが当たり前だからこそ、ずっと合っている人は「安心して任せられる人」になります
- 質問がまとまっている:聞き方が整理されている人は、仕事ができる人だと分かります
ほめ言葉としては返ってきません。でも、仕事を任される形で返ってきます。大事な仕事、面倒だけど重要な仕事は、そういう人に回ります。
現場から経理歴22年のゆい
あるとき、まったく別の部署の人から「困ったときはあなたに聞けばいいと言われました」と言われたことがあります。私は自分でアピールしたことはありません。毎月きちんと締めて、聞かれたことに答えていただけです。それでも、どこかで誰かが見て、話していたということです。地味な仕事ほど、時間をかけて評価が届きます。
新人のうちに積み上げてほしい4つ
① 期限を守る
経理と事務は、日が決まっている仕事のかたまりです。速さより、外さないこと。間に合わないと分かった時点で早めに言えば、それも信頼になります。
② 自分の答えを持ってから聞く
「分かりません」だけで聞きに行くのではなく、「こうだと思うのですが、合っていますか」と持っていく。この形にすると、聞くのが怖くなくなりますし、教える側も答えやすくなります。そして次から自分で判断できるようになります。
③ 記録を残す
教えてもらったこと、去年どうしたか、なぜそうしたか。書いて残した人だけが、1年後に楽をします。経理の仕事は1年でひと回りするので、去年の記録がそのまま今年の手順書になります。
④ 同じミスを繰り返さない形を作る
ミスは誰でもします。大事なのは、気をつけるのではなく、仕組みで防ぐことです。チェックリストを1枚作る、確認する順番を決める。それだけで再発はぐっと減ります。
軽く見る人とは、向き合わなくていい
残念ながら、事務の仕事を軽く見る人はいます。
そういう人に分かってもらおうとするのは、やめていいと思います。ていねいに説明しても、その人は変わりません。私が22年見てきた範囲では、そこに時間と気力を使ったぶん、こちらがすり減っただけでした。
向き合わなくていいです。かわりにやることは、1つだけです。言葉ではなく、事実を残すこと。
- やった仕事を記録に残す(何を、いつ、どれだけ)
- 改善したことはメモしておく(「締めが1日早くなった」「入力の手間が減った」など)
- その記録は、評価の面談でも、転職の面接でもそのまま使えます
面接で強いのは「真面目にやりました」ではなく、「どこまでを、どのソフトで、どう改善したか」です(経理の転職を成功させるコツ)。日々の記録が、そのまま次の武器になります。
つまり、自分の口で説明して分かってもらうのではなく、残した記録に証明してもらうということです。分からない人を説得する必要はありません。記録は、その人がいなくなっても残ります。
積み上がると、働き方の選択肢が増える
地道に積み上げた経理・事務の力は、その会社の中だけのものではありません。
- 社内では、任される仕事が増え、役職につながることもある
- 転職では、経験そのものが評価される(経理の年収とキャリアパス)
- 副業では、記帳代行や在宅経理としてそのまま収入になる(経理副業で必要な知識まとめ)
評価されにくい仕事だからこそ、続けた人だけが持てる力になります。
これだけはやってはいけない3つ
積み上げの話をしましたが、反対に一度で信頼を落とすこともあります。新人のうちに覚えてほしい3つです。
- 分からないまま、とりあえず入力する:あとで直すほうが何倍も手間がかかります。止まっていいので聞いてください
- 数字を勝手に合わせる:合わない理由が必ずあります。原因を飛ばして合わせると、次の月にもっと大きくなって戻ってきます
- 間に合わないことを黙っている:遅れそうだと分かった時点で言えば、たいてい何とかなります。当日に言われるのが一番困ります
逆に言えば、「聞く」「原因を追う」「早めに言う」の3つができれば、新人のうちは十分です。
1年目・3年目で見える景色が変わる
| 時期 | できるようになること |
|---|---|
| 2か月ほど | 1か月の流れが分かる。毎月やることが読めるようになる |
| 1年 | 1年の流れが分かる。年末調整も決算も一度は見た状態になる |
| 2年目 | 去年の記録があるので急に楽になる。段取りが立てられる |
| 3年目あたり | 「なぜそうするか」が分かり、聞かれる側に回りはじめる |
最初の1年は、できないのが当たり前です。1年に1回しか来ない仕事がたくさんあるのだから当然です。焦らなくて大丈夫です。
この経験は、副業でこう活きます
この記事では「記録を残す」と書きました。その記録は、副業でそのまま使えます。
社内の評価と、外での値段は別もの
事務の仕事は、社内では「できて当たり前」と思われがちです。でも外に出すと、それは仕事として値段がつきます。
毎月の締め、請求書の作成、給与計算。社内では誰も驚きませんが、人をかけられない会社にとっては、お願いしたい仕事です。
残した記録が、そのまま応募文になる
「何を、いつ、どれだけ」を書き残していれば、応募するときに困りません。
「月に◯件ほどの仕訳を入力し、月次の締めまでやっていました」——こう書けるのは、記録がある人だけです。記憶だけでは、数字は出てきません。
分かってくれない人に使う時間を、外に向ける
この記事の結論は「軽く見る人とは向き合わなくていい」でした。その時間とやる気を、外に向けるという選び方もあります。
社内で評価されなくても、外では必要とされている。それが分かるだけで、気持ちがずいぶん変わります。
まとめ
- 事務は「やって当たり前」と思われやすい仕事
- でも、見ている人は結構いる。評価はほめ言葉ではなく「任される」形で返ってくる
- 期限を守る/自分の答えを持って聞く/記録を残す/仕組みでミスを防ぐ
- 軽く見る人とは向き合わなくていい。説得するかわりに、記録に証明してもらう
- 積み上げた力は、社内でも転職でも副業でも使える
地味です。派手なことは何も起きません。それでもコツコツ積み上げた人は、必ず信頼を手にします。私が22年やってきて、いちばん確かだと思っていることです。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な内容です。評価の仕組みや職場の考え方は企業により異なります。2026年8月時点の情報に基づきます。
