簿記を取って経理に入ったのに、実務が始まったとたんに手が止まる。これは、ほとんどの人が通る道です。私も同じでした。
この記事では、経理を始めたころに私が本当に苦労したことを、そのまま書きます。今つまずいている人が「自分だけじゃない」と思えるように、そして早く抜け出せるように、抜け方もあわせてお伝えします。そして最初につまずいた場所は、副業で相手がつまずく場所でもあります。最後にその話も書きました。
① 仮払金・仮受金・未払金・未収金が分からない
似た言葉が4つ並んでいて、どれを使えばいいのか分かりませんでした。整理すると、見るところは2つだけです。
| お金はもう動いた | お金はまだ動いていない | |
|---|---|---|
| 出ていく | 仮払(仮に払った) | 未払(まだ払っていない) |
| 入ってくる | 仮受(仮で受けた) | 未収(まだ受け取っていない) |
「お金がもう動いたか、まだか」と「入るのか、出るのか」。この2つで決まります。4つを言葉として覚えようとすると、かえってこんがらがります。
② 本当につまずいていたのは、勘定科目ではなかった
これが一番伝えたいことです。当時の私がつまずいていたのは、勘定科目の意味ではありませんでした。会社の取引そのものを知らなかったことです。
会社にお金が入っていても、それが何の入金なのか分からなければ、どの科目にすればいいか決められません。逆に先に払っていても、何のために払ったのか、最後は何の費用になるのかが分からなければ、仮払金なのか前払費用なのか判断できません。
つまり経理は、勘定科目を覚えるだけでは足りません。その会社が何を売っていて、誰とどんな取引をしていて、そのお金が何のために動いたのかを知ることが必要です。
経理を始めたばかりのうちは、分からない仕訳をいきなり暗記するより、「このお金は、誰から・何のために・いつ・なぜ動いたのか」を確認する癖をつけるほうが近道です。取引が分かってくると、勘定科目は後からついてきます。
③ 経費なのか、仕入なのか
これは22年やっているいまでも、はっきりしない場面があります。簿記の知識だけでは決まらず、「それを何に使うのか」という事実を確認しないと判断できないからです。
同じ物を買っても、売るために仕入れたのか、社内で使うために買ったのかで扱いが変わります。分からないのは、あなたの理解が足りないからではありません。事実を知らないから決められないだけです。だから、買った本人に聞きにいきます。
④ 聞き方が分からない
新人のころ、いちばん怖かったのは「聞くこと」でした。忙しそうな人に声をかけるのも、同じことを二度聞くのも気が引けます。
そこで身につけたのが、自分の答えを持ってから聞くやり方です。
- 「分かりません」ではなく「こうだと思うのですが、合っていますか」
- 調べたこと、そう考えた理由を一緒に伝える
- 教わったら、その場でメモに残す
この形にすると、聞くのが怖くなくなります。そして「なぜそう考えるか」まで教えてもらえるので、次からは自分で判断できるようになります。
現場から経理歴22年のゆい
分からないとき、私は「分かりません」とだけ聞きに行くことはしませんでした。仮払・仮受・未払・未収は、まず自分で答えを出してから、税理士に確認しました。経費か仕入かは、買った本人に「これ、何に使うんですか」と聞いてから、上司に相談しました。自分の答えを持っていくと、聞くのが怖くなくなります。
⑤ 1年たたないと、全体が見えない
経理は1年でひと回りする仕事です。月末の締め、年末調整、決算——初めての作業は、1年に1回しか来ないものがたくさんあります。
だから、始めて数か月で「何も分からない」と感じるのは当たり前です。目安としてはこうです。
- 2か月ほどで、1か月の流れが見えてくる
- 1年たつと、1年の流れが見えてくる
- 2年目は「去年の記録」があるので、急に楽になる
だからこそ、1年目は記録を残すことが最大の仕事です。やったこと、教わったこと、迷ったことを書いておくと、来年の自分が助かります。
いま始める人がうらやましいと思うこと
私が始めたころと違って、今は調べる手段が増えました。会計ソフトの説明も充実していますし、分からない仕訳はAIに聞くこともできます。
ただし、AIの答えが合っているとは限りません。簿記の知識があるからこそ、答えのおかしさに気づけます。「簿記を取ったのに仕訳が分からないのはなぜ?」——そう思ったら簿記を取ったのに仕訳が分からない理由へ。理由と、AIに聞くときの注意点が分かります。
社内でしか通じない言葉に、けっこうつまずく
簿記の教科書には出てこないのに、社内では当たり前に使われている言葉があります。商品の略称、取引先の呼び方、「あの案件」「例の振込」——これが分からないと、会話についていけません。
これは調べても出てきません。聞くしかない言葉です。だから最初のうちは、自分用の言葉のメモを作るのがおすすめです。
- 社内でよく出る略語と、その意味
- 取引先の正式名称と、社内での呼び方
- その会社で使っている勘定科目の一覧
とくに勘定科目の一覧は早めに手に入れてください。その会社が何にお金を使っているかが、そのまま分かります。
最初の3か月でやっておくといいこと
- 会社が何で売上を立てているかを知る:何を売って、誰から入金があるのか。ここが分かると仕訳の意味が変わります
- お金の動く日を覚える:支払日、給与日、締め日。日にちが分かると1か月が読めます
- 去年の資料を見る:同じ月に去年何をしたかが、いちばんの教科書です
- 自分用のチェックリストを作る:教わったことを順番に書き出すだけで、翌月から迷いません
この経験は、副業でこう活きます
「初心者の頃につまずいた場所」は、忘れずに持っておいてください。それはそのまま、副業で相手がつまずく場所です。
相手の経理担当も、同じところで止まっている
副業で関わる会社の多くは、経理に人をかけられません。担当している人は、他の仕事と兼任だったり、経理を始めたばかりだったりします。
つまり自分が最初に分からなかったことを、相手もそのまま分からないということです。仮払金と仮受金の違い、経費なのか仕入なのか。ここをやさしい言葉で説明できる人は、思っているより少ないです。
「分かりません」と言える人が信用される
初心者の頃、分からないまま入力して大変になった経験があるなら、その感覚は残しておいてください。副業でも同じです。
「ここは判断が分かれるところなので、確認させてください」と言える人のほうが、勝手に決める人より安心されます。知らないことを言えるのは、実務を知っている証拠でもあります。
苦労した話は、そのまま自己紹介になる
副業の応募文に書く内容で迷ったら、うまくいった話よりつまずいた話とその抜け方を書いてみてください。同じところで困っている人には、いちばん届きます。
まとめ
- 仮払・仮受・未払・未収は「お金が動いたか」「入るか出るか」の2つで決まる
- つまずきの正体は勘定科目ではなく「会社の取引を知らないこと」
- 経費か仕入かは、簿記ではなく事実を確認して決める
- 聞くときは、自分の答えを持ってから聞く
- 1年たてば全体が見える。1年目は記録を残すことが最大の仕事
分からないことが多いのは、能力の問題ではありません。まだ会社のことを知らないだけです。これから経理を目指す人は未経験から経理になるにはもあわせてどうぞ。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な内容であり、個別の会計処理を保証するものではありません。判断に迷う処理は、社内の担当者や税理士にご確認ください。2026年8月時点の情報に基づきます。
