「月次決算」という言葉、経理の求人でよく見かけますよね。「月次決算ができる人」は経理として一段上に評価されますが、具体的に何をするのかは意外と知られていません。
この記事では、経理歴22年の視点で、月次決算とは何か・なぜやるのか・どんな流れで進めるのかを、実務目線で分かりやすく書いていきます。経理を目指す人にも、すでに記帳までは分かる人にも役立つ内容です。月次を締められるかどうかは、副業で受けられる仕事の幅が変わるところでもあります。最後にその話も書きました。
月次決算とは?一言でいうと
月次決算とは、1か月ごとに会社の業績(売上・利益)と財産の状況を確定させる作業です。1年に1回の「年次決算(本決算)」を、毎月ミニ版でやるイメージと考えてください。
毎月の数字を締めることで、「今月、会社は儲かったのか」「お金は足りているのか」をタイムリーに把握できる。これが月次決算の核心です。
なぜ月次決算をやるのか(目的)
法律で義務づけられた年次決算と違い、月次決算は会社が自主的にやるもの。それでも多くの会社が行うのは、こんなメリットがあるからです。
- 経営判断に使える:毎月の業績を見て、早めに手を打てる(年に1回では遅い)
- 予算と実績を比較できる:計画通りか、ズレているかを毎月チェック
- 年次決算がラクになる:毎月締めておけば、期末にまとめて慌てずに済む
- 資金繰りを管理できる:お金の動きを早く把握し、不足を防ぐ
つまり月次決算は、「会社の健康診断を毎月やる」ようなもの。経営者にとって欠かせない判断材料になります。
月次決算の流れ(基本ステップ)
会社によって細かさは違いますが、基本の流れはこうです。
ステップ1:その月の取引を全て記帳する
売上・仕入・経費など、その月に発生した取引を全て会計ソフトに入力します。記帳の漏れがあると以降が全て狂うため、まず取引を完全に取り込むことが出発点です。
ステップ2:残高を照合する(チェック)
現金・預金・売掛金・買掛金などの残高が、実際の通帳や台帳と合っているかを確認します。ここで合わない部分を見つけて原因を潰すのが、経理の腕の見せどころです。
ステップ3:月次特有の調整をする
その月の損益を正しくするための調整を入れます。代表的なのはこのあたり。
- 減価償却費の計上:年間分を12等分して毎月計上
- 前払費用・未払費用の調整:その月に対応する費用を正しく反映
- 在庫の確認:棚卸資産の変動を反映
ステップ4:試算表・月次資料をまとめる
締めた数字をもとに、試算表や月次レポート(損益の状況、予算と実績の比較など)を作成します。経営者が見て判断できる形に整えるのがゴールです。ここでExcelを使いますが、毎月おなじ形の表に数字を入れていくことがほとんどで、特別なスキルは要りません(経理で使うExcel)。
現場から経理歴22年の管理人
手順としてはこのとおりです。ただ実際の現場では、「締まる日」が1つではありません。私が担当してきた会社では、こうでした。
- 本社の現預金/翌月1日に締まる
- 各営業所の現預金と売掛金/10日ごろまでかかる
- 買掛金/月末ごろ
一番遅いものがそろうまで、月次は確定できません。その結果、仮の試算表が出るのは翌々月のはじめごろになります。
「月次決算は5営業日で締めましょう」とよく言われます。でも拠点がいくつかあって、そこからデータが集まってくる会社では、そう簡単にはいきません。遅れているのは、あなたの作業が遅いからとはかぎりません。
実際に、1か月で何をしているのか
流れは分かっても「で、毎日は何をしているの?」が見えにくいと思います。ここではある1か月の実際の動きを、時期ごとに並べます。会社によって日付は違いますが、順番はだいたい同じです。
| 時期 | やっていること |
|---|---|
| 月初(1〜3営業日) | 前月の請求書が届いているか確認。売上と仕入を確定させる。前月ぶんで抜けている伝票がないかを見る |
| 月初〜前半 | 取引先へ請求書を発行。支払いの予定を作る。経費精算のしめ切りを回収する |
| 支払日の前 | 支払データを作って確認。残高が足りるかを見る。振込の手続き |
| 給与の締めのあと | 勤怠を集めて給与計算。控除の変更(保険・住民税・扶養)を反映する |
| 中旬 | 預金・現金・売掛・買掛の残高を合わせる。合わないところを追いかける |
| 下旬 | 月次の調整(減価償却、前払・未払の計上)。試算表を作る |
| 締めたあと | 数字を上に報告。気になる動きがあれば理由を調べて添える |
| 毎日 | 入出金のチェック、伝票の入力、社内からの問い合わせ対応 |
ポイントは、月次決算は月末にまとめてやる作業ではないということです。毎日の入力と確認が積み上がって、最後に形になります。日々ためこむと、締めのときに一気に苦しくなります。
時間がかかるのは「入力」より「合わないところ探し」
作業として重いのは、伝票の入力ではありません。残高が合わないときに、原因を探す時間です。
- 入金があったのに、何のお金か分からない
- 請求書が届いていないので、金額が確定しない
- 経費精算が出てこない
どれも、自分ひとりでは終わりません。人に聞かないと進まない仕事です。だから月次を早く締めたいなら、入力を速くするより「聞くのを早くする」ほうが効きます。
現場から経理歴22年の管理人
私が月初にまずやるのは、入力ではなく「足りないもの探し」です。請求書が来ていない取引先、出てきていない経費精算。ここを最初に見つけて、その日のうちに催促します。先に声をかけておけば、待っている間に他の作業ができます。逆に、順番どおりに入力から始めると、最後に足りないものが出てきて締めが止まります。
「締まる日」は1つではない
手順としてはこのとおりです。ただ実際の現場では、「締まる日」が1つではありません。私が担当してきた会社では、こうでした。
| 締まるもの | そろう時期 |
|---|---|
| 本社の現預金 | 翌月1日 |
| 各営業所の現預金と売掛金 | 10日ごろまでかかる |
| 買掛金 | 月末ごろ |
一番遅いものがそろうまで、月次は確定できません。その結果、仮の試算表が出るのは翌々月のはじめごろになります。
別の会社では、翌月1日の午前中に仮の試算表が出て、確定したものは中旬ごろでした。同じ「月次決算」でも、会社によってここまで違います。拠点の数、データの集まり方、締めのルール——条件が変われば、締まる日も変わります。
「月次決算は5営業日で締めましょう」とよく言われます。でも拠点がいくつかあって、そこからデータが集まってくる会社では、そう簡単にはいきません。遅れているのは、あなたの作業が遅いからとはかぎりません。まず「どこで待ちが発生しているのか」を確かめてください。自分の手元で止まっているのか、データが来ていないのか。ここが分かるだけで、やることが変わります。
月次決算と年次決算の違い
| 月次決算 | 年次決算 | |
|---|---|---|
| 頻度 | 毎月 | 年1回 |
| 目的 | 経営判断・業績管理(社内向け) | 税金計算・決算書作成(対外的) |
| 義務 | 任意(会社の判断) | 法律上の義務 |
| 精度 | スピード重視(多少の概算もOK) | 正確性が最優先 |
大きな違いは、月次は「スピード重視で経営に使う」、年次は「正確性重視で税金・決算書のため」という点です。
月次決算を早く締めるコツ(月次早期化)
「月次決算が毎月遅れる」という悩みは、経理の現場でよくあります。早く締める(月次早期化)ためのコツを、経験から紹介します。
- 日次処理をためない:毎日コツコツ記帳しておくと、月末がラクになる
- 会計ソフトの自動化を活用:銀行・クレカ連携で記帳を自動化(会計ソフト比較)
- 締めのスケジュールを決める:「◯営業日までに締める」と期限を明確に
- 完璧を求めすぎない:月次は概算でも早く出すほうが経営に役立つ
- チェックを仕組み化する:照合の手順を決め、特定の人しかできない状態を防ぐ
特に効くのは「日次をためない」こと。月末にまとめてやろうとすると地獄を見ます。毎日少しずつ進めるのが、結局一番早く正確に締めるコツです。
一番時間を食っているのは、じつは「作業」ではないことがあります
早く締めるコツを書きましたが、そもそもどこで止まっているのかが分からないと、直しようがありません。私の場合はこうでした。
現場から経理歴22年の管理人
月次が遅れる原因は、私の場合「データが自分のところまで来ないこと」でした。仕訳を入力する作業そのものには、そこまで時間はかかりません。待っている時間のほうが長いのです。
やり方が長く定着している職場ほど、流れを変えるのには時間がかかります。「前からこうしているから」で回っているものを、いきなり変えることはできません。
それでも、1つだけ大きく効いたことがあります。税理士さんにお願いしていた作業の一部を、社内で引き取ったことです。これだけで試算表が出るのが1か月早くなりました。前は翌々月の中旬でしたが、いまは翌々月のはじめには出ます。
ただ、まだ遅いと思っています。いまは税理士さんがやっていた順番のまま進めているので、次は順番そのものを変えるのが私の課題です。
もし月次が遅いと悩んでいるなら、まず「どこで止まっているか」を見てください。自分の作業なのか、人待ちなのか、仕組みなのか。止まっている場所が分かれば、直す場所も決まります。
月次決算ができると評価が上がる
記帳だけでなく月次決算まで一人でこなせる経理は、働き手としての価値が一段上がります。
- 転職で有利になる:「月次決算の経験あり」は求人で強い(経理の転職のコツ)
- 年収アップにつながる:任される範囲が広がる(経理の年収とキャリアパス)
- 経理副業でも武器になる:記帳代行から経理代行へレベルアップ
月次決算の土台になるのは簿記の知識です。簿記2級レベルの理解があると、決算整理の意味がしっかりつかめます。
この経験は、副業でこう活きます
月次決算まで分かっているかどうかは、受けられる仕事の幅が変わるところです。
「入力まで」と「締めまで」は別の仕事
副業でよくある記帳代行は、多くが仕訳を入力するところまでです。そこから先の「締めて、試算表を出して、税理士さんに渡す」まで分かる人は、ぐっと減ります。
ここまでできると、会社の中の人がやっていた作業を、そのまま引き取れることになります。
外から見るほうが、止まっている場所は見つけやすい
この記事で書いたとおり、月次が遅れる原因は作業そのものより「データが来ないこと」のほうが多いです。そしてそれは中にいる人ほど見えません。「前からこうだから」で回っているからです。
外から入ると、そこが見えます。「どこで止まっているか」を言えるだけでも、値段のつく仕事だと思っています。
受けるときに確かめること
- どこまでを自分がやるのか(入力までか、締めまでか)
- 資料はいつ・誰から届くのか。届かないときは誰に言うのか
- 税理士さんが入っているか。入っているなら、やりとりは誰がするのか
とくに2つ目です。遅れの原因が資料待ちなら、それはこちらの責任ではありません。最初に決めておかないと、あとで自分のせいにされます。
まとめ
- 月次決算とは「毎月、会社の業績と財産を確定させる」作業
- 目的は経営判断・予算と実績の管理・年次決算の負担軽減・資金繰り管理
- 流れは 記帳 → 残高照合 → 月次調整 → 試算表・資料作成
- 年次決算と違い、スピード重視で社内向け
- 日次をためないのが、早く正確に締める最大のコツ
- 締まる日は1つではない。一番遅いものに引きずられる
- 遅れの原因は作業ではなく「データ待ち」のことが多い
月次決算は、会社の「今」を数字で映し出す大事な仕事です。記帳の次のステップとして月次決算ができるようになると、経理としての価値がぐっと高まります。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は筆者の実務経験に基づく一般的な解説であり、具体的な処理は企業の規模・方針により異なります。2026年6月時点の情報に基づきます。
