給与明細を見て「思ったより手取りが少ない」と感じたことはありませんか。引かれているものは、大きく分けると3つだけです。
私は経理・総務・労務を兼任していて、この3つを毎月計算して納める側にいます。社内の勉強会で説明したこともあるので、そのときの資料をもとに、しくみを順番に書きます。
給料から引かれるものは、この3つ
| 引かれるもの | 誰に納める | いつの所得にかかる |
|---|---|---|
| ① 所得税 | 国(国税) | その年の1月〜12月 |
| ② 住民税 | 市区町村(地方税) | 前の年の1月〜12月 |
| ③ 社会保険料 | 健康保険・年金の制度へ | 4〜6月の給与で決まる |
ポイントは、3つとも「かかるタイミング」が違うことです。ここが分かると、給与明細の見え方が変わります。
① 所得税:毎月は「だいたいの金額」を引いている
所得税は、その年の1月から12月までの所得にかかる国の税金です。ただし、1年が終わらないと金額は確定しません。そこで会社はこうしています。
- 毎月の給与から概算の金額を天引きする(源泉徴収)。扶養している人の数や給与額に応じて計算します
- 1年の所得が確定したあと、12月の年末調整で精算する
年末調整では、次のような控除が反映されます。
- 基礎控除
- 配偶者控除、扶養控除
- 生命保険料控除、地震保険料控除
- iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、社会保険料控除
- 住宅ローン控除 など
1年ぶんの概算が本来の金額より多ければ、差額が戻ってきます(還付)。12月の給与が少し多いのは、これが理由です。
ここは誤解が多いところです。控除は「税金を少なくする」しくみであって、お金がもらえる制度ではありません。控除の金額が大きくても、実際に払った税金より多く戻ってくることはありません。「保険に入ると得」「◯◯すれば戻ってくる」という話を見たら、まずここを思い出してください。
② 住民税:去年の所得にかかる。だから1年ずれる
住民税は、前の年の所得に対してかかります。納める先は、その年の1月1日時点で住民票がある市区町村です。
- 市区町村が税額を決めて、会社に通知します
- 会社が毎月の給与から天引きします(特別徴収)
- 6月から新しい金額になります
たとえば2025年の所得に対する住民税は、2026年6月から2027年5月にかけて払います。1年ずれるのが住民税の特徴です。
新社会人の1年目に住民税が引かれないのは、前の年に所得がないからです。逆に2年目から手取りが減ったように感じるのも、これが理由です。
退職するときは、退職日で扱いが変わる
ここは知らない人が多いところです。住民税は1年ぶんが決まっているので、辞めるときに残りをどうするかという話が出てきます。
| 退職日 | 残りの住民税の扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 原則、5月分まで最後の給与などから一括で天引きされます |
| 5月1日〜5月31日 | その月分を天引きして終わり |
| 6月1日〜12月31日 | 一括で天引きするか、自分で納める(普通徴収)かを選べます |
1月から4月に辞めると、最後の給与から数か月ぶんがまとめて引かれることがあります。手取りが思ったより減るので、辞める時期を選べるなら知っておいてください。
住民税の納め方の話は住民税を普通徴収にする方法にもまとめています。
③ 社会保険料:4〜6月の給与で1年ぶんが決まる
社会保険料は、健康保険・厚生年金保険・介護保険(40歳から)などの保険料です。金額の決まり方に特徴があります。
- 4月・5月・6月に支払われた給与の平均から「標準報酬月額」が決まります
- その金額に基づいて、9月分の給与から新しい保険料になります
- 昇給や手当で給与が大きく変わったときは、途中でも見直されます(随時改定)
- 保険料は会社と本人で半分ずつ負担します(労使折半)
つまり4〜6月に残業が多いと、その年の保険料が高くなることがあります。よく言われる話ですが、しくみとしては本当です。
このほかに、会社は子ども・子育て拠出金も納めていますが、これは全額が会社負担で、給与から引かれることはありません。
労働保険(労災保険・雇用保険)
- 労災保険料は全額が会社負担です。給与から引かれません
- 雇用保険料は、会社と本人で率が違います
2026年度(令和8年度)の一般の事業では、本人の負担は1,000分の5、会社の負担は1,000分の8.5です。賃金の総額が20万円なら、本人が1,000円、会社が1,700円という計算になります。※率は年度によって変わります。最新は厚生労働省の案内をご確認ください。
2026年4月から「子ども・子育て支援金」が始まりました
2026年度から、子ども・子育て支援金という新しい負担が始まりました。医療保険(健康保険など)の保険料に上乗せする形で集められます。
- 会社員などが入る健康保険では、2026年度の支援金率は0.23%
- 2026年4月分の保険料(5月の給与から天引き)から
- 保険料と同じく、会社と本人で半分ずつの負担です
- 2026年度から2028年度にかけて、段階的に増えていきます
「4月から少し手取りが減った気がする」という場合、これが理由のひとつです。
現場から経理歴22年・ゆるゴースト
この3つを説明する勉強会をしたとき、いちばん質問が多かったのが控除の話でした。「保険に入れば戻ってくる」と思っている人が本当に多いです。そのたびに「戻るのは払った税金の範囲まで」と説明しています。もうひとつ多いのが、辞めた月によって住民税がまとめて引かれる話。これは説明していないと、必ず驚かれます。
手取りを増やしたいときに見るところ
引かれるものを減らすには、使える控除を使い忘れないことが基本です。
- 年末調整で出し忘れた控除がないか(保険料、iDeCoなど)
- 医療費が多かった年は、確定申告で医療費控除を検討する
- ふるさと納税は、税金が安くなるのではなく先に払うしくみ(ふるさと納税の仕組み)
会社員でもできることは会社員の節税にまとめています。副業を考えているなら、税金の全体像は副業の始め方から読んでみてください。
まとめ
- 給料から引かれるのは、所得税・住民税・社会保険料の3つ
- 所得税は毎月が概算。12月の年末調整で精算する
- 控除は税金を少なくするしくみ。払った以上に戻ることはない
- 住民税は前の年の所得にかかり、6月から新しい金額になる
- 1月〜4月に退職すると、5月分まで一括で引かれるのが原則
- 社会保険料は4〜6月の給与で決まり、9月分から変わる
- 2026年4月から子ども・子育て支援金が上乗せされた
給与明細は、見方が分かると「なぜこの金額なのか」が分かります。分からないまま引かれているより、しくみを知っておくほうが、働き方も副業も選びやすくなります。
参考・出典(公的機関のサイト)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険の相談ではありません。保険料率や制度は年度によって変わります。具体的な金額や手続きは、勤務先・市区町村・年金事務所・税務署にご確認ください。2026年8月時点の情報に基づきます。
